2016年6月9日、欧州研究図書館協会(LIBER)、国際図書館連盟(IFLA)、欧州図書館・情報・ドキュメンテーション協会連合(EBLIDA)の3者が連名で“Be Open to Open Science: Stakeholders Should Prepare for the Future, not Cling to the Past”と題した声明を出しました。
2016年5月27日に承認されたオープンサイエンスシステムへの移行に関する欧州理事会総括(“The transition towards an Open Science system”)に対し、賛同の意を表明した声明となっており、2016年4月4日と5日に開かれたEU理事会議長国・オランダ主催のイベントで提示された“ Amsterdam Call for Action”について賛意を表明するとともに、図書館が“ Amsterdam Call for Action”の文脈にそってどのようなことができるかについて6点にわたって示した5月17日のLIBERの意見表明に示した内容と同趣旨であったとしています。
声明は、まず、国際STM出版社協会が5月28日付で表明した意見に対して失望の意を表明しており、その後、(1)持続可能性、(2)費用、(3)オープンサイエンス、(4)著作権の4点それぞれについて言及されています。
(1)では、国際STM出版社協会の意見表明において、80%の学術出版物が購読契約されているものであるとされていることをミスリーディングであるとし、特にグリーンオープンアクセス(OA)などのように、研究者に対し自身の研究成果を機関リポジトリに登録するよう世界中の図書館が働きかけていると指摘しています。また、Science-Metrix社が2013年に刊行したレポートの学術出版物の50%以上がOAであるという結果を引き合いにだしています。
(2)については、急速なOAの進展によって欧州の国々や研究者への過重な費用負担が発生するとの考えを否定しており、また、ゴールドOAが常に著者負担になるわけではないとして、人文科学分野のオープンアクセス(OA)の新しいモデル目指す“Open Library of Humanities(OLH)”などのモデルを例に挙げています。また、価格交渉における透明性の向上についても言及があり、EU各国が新たなビジネスモデルと、持続可能なOA出版を確保する学術コミュニケーション市場の形成を模索するべき局面にあるとされています。
(3)では、現在の、出版されたジャーナルのインパクトファクターに比べ、オープンサイエンスによって、研究プロセスやデータがオープンになることで、研究の質や影響がより認められるようになるとしており、また“Open Science Policy Platform”にも言及しています。
(4)では、テキストデータマイニングの需要の大きさについて言及があります。
声明の末尾では、国際STM出版社協会を含め、全ての出版社が過去に囚われるのではなく、欧州や世界の図書館コミュニティとともにオープンサイエンスに向かっていくべきであるとされています。
Be Open to Open Science: Stakeholders Should Prepare for the Future, not Cling to the Past(LIBER, 2016/6/9)
http://libereurope.eu/blog/2016/06/09/be-open-to-open-science/
http://libereurope.eu/wp-content/uploads/2016/06/Be-Open-to-Open-Science.pdf
※2つ目のリンクは、声明のPDFファイルです。
Be Open to Open Science – Libraries Call on All Stakeholders to Play a Constructive Role(IFLA, 2016/6/9)
http://www.ifla.org/node/10516
Be Open to Open Science: Stakeholders Should Prepare for the Future, not Cling to the Past.(EBLIDA, 2016/6/9)
http://www.eblida.org/news/be-open-to-open-science.html
関連:
The transition towards an Open Science system(EC, 2016/5/27付)
http://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-9526-2016-INIT/en/pdf
LIBER Response to the Amsterdam Call for Action(LIBER, 2016/5/17)
http://libereurope.eu/blog/2016/05/17/liber-response-amsterdam-call-action/
“2,5 pages of nonsense” – The STM statement on the Open Science Council conclusions(LERU, 2016/6/2)
http://www.leru.org/index.php/public/news/25-pages-of-nonsense-the-stm-statement-on-the-open-science-council-conclusions
The Hague Declaration
http://thehaguedeclaration.com/the-hague-declaration-on-knowledge-discovery-in-the-digital-age/
LIBER Signs The Hague Declaration on Knowledge Discovery in the Digital Age(LIBER)
http://libereurope.eu/blog/2015/05/11/liber-signs-the-hague-declaration-on-knowledge-discovery-in-the-digital-age/
参考:
国際STM出版社協会、EU競争力担当相理事会によるオープンアクセス合意に対し意見を表明
Posted 2016年6月7日
http://current.ndl.go.jp/node/31754
EU競争力担当相理事会、2020年までにすべての公的資金による学術出版物をオープンアクセス化することで合意
Posted 2016年5月31日
http://current.ndl.go.jp/node/31703
EU理事会議長国・オランダ主導のもと、EUのオープンサイエンスに関する会議が開催され、アクションプランが示される
Posted 2016年4月7日
http://current.ndl.go.jp/node/31283
国際図書館連盟(IFLA)がオープンアクセスに関する見解と戦略をまとめた声明を発表
Posted 2011年4月18日
http://current.ndl.go.jp/node/18024
Science-Metrix社、2011年に刊行された論文の半分は既にオンラインで無料で利用できるとの調査結果を公表
Posted 2013年8月23日
http://current.ndl.go.jp/node/24227
E1239 – オープンアクセスに関するIFLAの取り組み
カレントアウェアネス-E No.205 2011.11.25
http://current.ndl.go.jp/e1239