CA725 – 視覚障害者のコンピュータへのアクセス―米国ミシガン州の例― / 宮代信子

カレントアウェアネス
No.139 1991.03.20


CA725

視覚障害者のコンピュータヘのアクセス
−米国ミシガン州の例−

視覚障害者がコンピュータを利用できるようになれば,教育・雇用・社会参加への道が拡がるなどメリットは大変に大きい。パソコンやワープロを学んだ視覚障害者は,電子メールによって通信ができ図書館目録やデータベースにもアクセスが可能となる。しかしながら,情報処理技術の発達に伴い,グラフィックインターフェイスが頻繁に使われるようになるにつれて,視覚障害者がコンピュータ情報システムにアクセスすることが困難になってきている。

視覚障害者は,音声入力あるいはキーボードのどちらかによってコンピュータと対話することが可能である。両者の中では,キーボード入力の方が音声入力よりもマスターすることが難しい。そこで,ミシガン州労働局の資金を得て,Computer Access for the Vision and Employment(CAVE)と呼ばれるキーボードをやさしく学ぶためのプログラムが開発された。このプログラムは,ユーザが自分のペースで学べるように設計されている。例えばCAVEの一部でSIMCATと呼ばれるワープロ学習用のプログラムでは,学習上の指示や援助は音声合成装置を通じてなされ,ユーザは指示に従って,自分のペースで順を追って学ぶことができる。現在約30人の視覚障害者がモニターとなって研究に協力しており,彼らの評価がミシガン州内の盲人・身体障害者図書館の機械化に生かされることが期待されている。

ミシガン州立図書館盲人・身体障害者サービスでは,キーボードの操作と音声によるアクセスを結合したサービスが提供されている。ANSWER SPEAKSはANSWERというミシガン州立図書館のコンピュータ目録へ,音声によるアクセスを提供している。そのワークステーションは,Vert Plus音声合成装置とVistaディスプレイ画像拡大器を持つIBM ATパーソナルコンピュータで構成されている。検索の際,コンピュータは探し出した個々の目録記入を読み上げ,ユーザはその中から欲しい墨字資料を指示する。ユーザはその墨字資料を手にすると,カーツワイル パーソナル・リーダーあるいは3から45倍に拡大して見せるVisual Tek Voyager Print Enlargerという有線テレビ・システムのような機器によって読む事ができる。これらの機器は,視覚障害者に最近注目されている分野で,この他にもrefreshable点字と呼ばれる,スクリーンのテキストを変換し一度に一行ずつ点字でディスプレイするシステムなどがある。コンピュータ入力装置やこれらの機器を利用できる視覚障害者の図書館利用者は,CD-ROMデータベースと対話することも可能である。Duxburyのような点字変換プログラムは,アスキーコードのCD-ROMデータベースから検索した情報を点字へと変換したり,拡大文字に変換したり,合成音声を使ってカセット化する事も可能である。

宮代信子(みやしろのぶこ)

Ref: Johnson, Susan W. Computer access for the blind and visually impaired. Information Retrieval & Library Automation 26 (5) 1-3, 1990