CA669 – 西ドイツ学術協議会による遡及目録作成の勧告 / 滝本佳代

カレントアウェアネス
No.130 1990.06.20


CA669

西ドイツ学術協議会による遡及目録作成の勧告

西ドイツの学術協議会は,国内の学術図書館に対して,第二次大戦以後の蔵書の遡及目録を作成するよう勧告している。国が連邦制をとっているために,資料も各州に分散していることや,個々の図書館においても,古い歴史のある所(たとえばニーダーザクセン州立兼ゲッチンゲン大学図書館は1734年設立)では,時代ごとに目録が分断されていることから,包括的な目録の必要性が高い。

今日では情報処理技術が発達し,諸外国,特に米国などではOCLC等総合目録データベースシステムが充実している。コンピュータを導入した総合目録を作ることによって,件名付与や検索機能拡大,二次的な形態(コピー,マイクロ等)の把握,国外への貸出といった目録としての進歩が期待されるほか,目録作成用のデータ源としても利用できる。

1980年代初めには,すでにドイツ研究協会が,バイエルン州立図書館とニーダーザクセン州立兼ゲッチンゲン大学図書館のそれぞれで,1850年以前の古い蔵書(それぞれ66万タイトル,110万タイトル)の,時代ごとの分断を結合させることを開始した。両図書館は共通の最小限の規準のもとに自館の目録レコードを機械可読形に変換し,これを総合目録の核とする。

学術協議会の勧告が,ドイツ研究協会のプロジェクトと異なる点は,対象となる図書館が広範囲に及ぶことと,蔵書も利用率の高い(総貸出の80%)1945年以降の受け入れの蔵書を対象とする点である。すべての大学図書館,中央専門図書館群,ベルリン国立図書館,バイエルン州立図書館,比較的大きな公共図書館,そしてドイツ図書館が参加館に指定されている。

学術協議会は,ドイツ研究協会のプロジェクトと関連して地域的なネットワークシステムの構築・完成をもめざしているが,ドイツ図書館協会とドイツ研究協会には,1850年から1945年までのあいだの蔵書目録作成が課題として残される。

遡及目録作成にあたっては,1966年以降の分は既に機械可読形であるけれども,複数のデータベースが存在するため,フォーマットや目録規則,使用言語,分類,件名デスクリプタなどがまちまちである。そこでドイツ図書館機械可読総合目録を基準のデータベースとし,各館の目録データをこれに変換することが最良の方法と考えられている。変換されたデータは各地域の図書館センターに集められ,それ自身を遡及目録拡大のためのデータ源とする。さらに地域を超えたデータプールヘと集結させていき,総合目録を構築する。

学術協議会が統計にもとづいて,目録データの変換のための費用を計算したところでは,大学図書館が2,230万タイトル,中央専門図書館群,ドイツ図書館その他の学術図書館が744万タイトルで,目録レコード1件あたり最高15ドイツマルクかかる(データの受け入れと加工,ワークステーション機器,ソフトを含む)。したがって合計すると1億5千万ドイツマルクがかかるとして,協議会は各州と連邦に,10年間にわたる経済援助を要求した。

滝本佳代

Ref. Landwehrmeyer, Richard: Die Empfehlungen des Wissenschaftstates zur retrospektiven Katalogisierung an wissenschaftlichen Bibliotheken. ZfBB 36 (1) 19-29, 1989.
Empfehlungen des Wissenschaftsrates zur retrospektiven Katalogisierung an wissenschaftlichen Bibliotheken. ZfBB 35 (5) 423-437, 1988.
この後,やはり遡及入力の問題を論じた次の論文が同誌上に掲載された。
Mittler, E.: Katalogkonversion-Wendepunkt fur deutsche Bibliotheken ? ZfBB 36 (5) 407-418. 1989.