カレントアウェアネス
No.263 2001.07.20
CA1403
求人情報にみるレファレンスサービス責任者の姿
求人情報はあるポストの職務内容,要求される資質や資格を示すものであるため,その分野の発展や動向を強く反映している。今回紹介する調査は,1990年から1999年の10年間にAmerican Libraries, College & Research Libraries News, Chronicle of Higher Educationの3誌に掲載された求人情報の中で,大学図書館のレファレンスサービス責任者を募集した127件を対象に,その資格要件や職務内容を分析したものである。
レファレンスサービス責任者の職名については,88件の求人情報が「レファレンスまたはレファレンスサービス」の「長(head)またはコーディネータ」を用いていた。その職務内容は多様であり,レファレンス業務の責任者として幅広い責務の遂行を期待されていることがわかる。レファレンス業務の管理・監督(91件)はもちろんのこと,以下利用指導(85件),専門職への指示・監督(81件),コレクション構築(76件),一般スタッフへの指示・監督(76件),電子レファレンス(57件)など,30を超える項目が求人情報に示されていた。
近年,電子情報資源の普及があらゆる図書館員の職務に非常に強い影響を与えていることは言うまでもない。この調査ではその影響をよりよく理解するために,求人情報の中に「CD-ROM」「オンライン検索」「電子レファレンス」「インターネット」「ウェブ」といった用語が含まれているかどうかを分析している。10年間の全求人情報の57%が電子資源に触れていることから,電子情報を扱うことがレファレンスサービス責任者の重要な責務とみなされていることがわかる。ただし,用語が一番多く見られたのは1992年(その年の求人の78%),逆に一番少なかったのは1994年であり(同じく43%),必ずしも年を追って増加しているわけではない。
給与については平均は37,763ドルであり,1990年から1999年の間に11,714ドル(36%)増加していた。これは大学図書館員の平均給与よりは高かったが,研究図書館協会(Association of Research Libraries : ARL)加入図書館のレファレンスサービス責任者の平均よりは低い数字である。
さらに学歴条件としては,ほとんどすべての求人(123件)で図書館学修士号が要求されていた。このうち図書館学修士号のみを必要学歴としていたのは104件で,少数ではあるが第二修士号や博士号を条件とした求人もあった。技能や経験については,コミュニケーション能力(100件),管理・監督の経験(29件),オンライン情報資源に習熟していること(60件),(伝統的な)レファレンスサービスの経験(65件)など,学歴よりも多様な条件が要求されていた。
この調査から米国におけるレファレンスサービス責任者に求められる資質とその幅広い職務が浮かび上がってくる。日本においても,レファレンスサービス責任者の責務を考えるうえで参考になると思われる。
北川 知子(きたがわともこ)
Ref: White, G.W. Head of reference positions in academic libraries. Ref User Serv Q 39(3) 265-272, 2000