CA1366 – 20世紀ニッポンの図書館員−図書館職員実態調査こぼれ話− / 図書館研究所

カレントアウェアネス
No.257 2001.01.20


CA1366

20世紀ニッポンの図書館員―図書館職員研修実態調査こぼれ話―

1999(平成11)年度に国立国会図書館図書館研究所は日本図書館協会の協力を得て「都道府県立及び政令指定都市立図書館における研修のニーズと実態調査」を実施し,報告書を2000(平成12)年6月に出版した。調査は,「図書館調査」(各館研修担当者用)と「職員調査」(職員個人用)の2種類のアンケートによるもので,回収率は図書館調査100%,職員調査約83%であった。ここでは職員調査から見えてきた図書館職員の研修ニーズについて,印象に残った特徴を紹介してみたい。

職員調査では,過去5年間の研修への参加状況や研修情報の入手方法などの実態面,受けたい研修のテーマや形式などのニーズ面の両面から質問した。また,ニーズの分析に役立つように,各人の属性についても年齢・性別・学歴・図書館勤務年数・所属団体など詳しく尋ねた。

年齢層・性別による人数の割合は右の表のとおりである(単位はパーセント)。図書館は若い男性が少ない職場である,というイメージを裏づけるような結果となっているが,女性の方は世の中の傾向と同様に途中でいったん落ち込むM字型となっている。

各年齢層・性別グループの中で特徴的な属性を持つ架空の「典型的図書館員」に,研修経験やニーズについて語ってもらうと…。

表

  • 20代の意見
    「必修の研修は通知が来るけど,それ以外はあまり参加したことがない。(20代前半男性・係員)」「あまり研修情報が来ないし,研修を受けたこともない。(20代前半女性・係員)」「レファレンス研修の中級とか著作権の初級研修を受けてみたいですね。何日か集中してやる形式でも大丈夫。(20代後半男性・係員)」「障害者・児童・YAサービスの中級研修を受けたい。一日で終わる研修にしてほしいけど。(20代後半女性・係員)」
  • 30代の意見
    「中級研修で専門性のあるテーマを受けてみたいですね。研修参加経験は結構あります。(30代後半男性・係長)」「研修情報はやっぱり口コミ。障害者・YAサービスの初級研修を受けたいな。(30代女性・係員)」
  • 40代の意見
    「システムを導入したいからコンピュータ利用技術の初級が受けたい。(40代男性・課長)」「いろいろ参加していますけど,日常業務が忙しいので断続的に行われる研修がいいです。古典籍や地域資料などの中級研修を受けたい。(40代女性・係長)」
  • 50代以上の意見 
    「当館のシステムを理解したいからコンピュータ利用技術の初級を受けてみたいね。(55歳以上男性・他部局から移動してきた館長)」「研修は待っているだけじゃだめ,研究会にもいろいろ参加しなきゃ。ちょっと苦手なデータベース利用の中級研修を受けてみたいですけど。(50代女性・係長)」

もちろんこれらの発言はフィクションであり,大まかな傾向を表しているにすぎない。とはいえ,周りにこんな人がいそうな気がしませんか?

調査で明らかになった図書館職員の研修ニーズに21世紀の国立国会図書館がどれだけ応えていけるか――2002(平成14)年度から関西館(仮称)で行う予定の本格的な研修交流事業の試行として,まず手始めに2000(平成12)年度末,東日本地域の都道県立および政令指定都市立図書館のレファレンス担当中堅職員を対象に「レファレンス特別研修」を実施することになっている。

国立国会図書館図書館研究所

Ref:国立国会図書館図書館研究所 都道府県立及び政令指定都市立図書館における研修のニーズと実態 日本図書館協会 2000