CA1128 - ニュースラインネットワーク−視覚障害者のための全国的な新聞サービス− / 楢木健一郎

カレントアウェアネス
No.213 1997.05.20


CA1128

ニュースラインネットワーク
−視覚障害者のための全国的な新聞サービス−

全米盲人協会(National Federation of the Blind:NFB)のジャーニガン(Kenneth Jernigan)博士は,1996年5月にピッツバーグで開催された視覚及び身体障害者のための全国サービス(National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLSB)の会議でニュースラインネットワークと呼ばれる視覚障害者のためのサービスについて報告した。以下はその概要である。

NLSBの点字・録音サービスの利用者は,アメリカ全土におよそ80万人いる。視覚障害者に対する図書館サービスは,専ら録音や点字の媒体によるが,新聞などになると,上記の媒体で,記事全てを読んだり聴いたりすることはできない。理由は明瞭である。製作に費用と手間がかかり過ぎるからである。視覚障害者が健常者と同様,タイムラグ無しに新聞を読むことができるようにすることは,一種の夢であった。

近年,視覚障害者のために新聞を朗読することが試みられるようになった。その最初の方法は,ラジオを通して朗読サービスを行う方法である。しかし,このやり方では,放送のための機器類,ラジオチャンネル開設のための経費,放送に携わるスタッフの経費等にかなりの金額を要する。また,利用者の側は,特別な周波数で放送するため受信用に高価な受信機を必要とする上に,放送時間を逃したら,二度と聴くことができない。

このような問題に対処するために,第2世代とも呼ぶべき方法が生まれた。その方法とは,朗読者が新聞記事をコンピュータに吹き込み記憶させ,それを電話回線を通して利用してもらう方法である。この方法なら,いつでも好きな時に好きな記事を何度でも読むことができる。しかし,まだ問題がある。サービスを毎日提供するためには,費用を抑えるために,少数のボランティアに朗読を委ねざるをえない。その場合,朗読者の技量に差ができることは避けられないし,さらに,病気や何らかの理由で来られない場合,サービスに支障をきたす。また,第1の方法同様,機器類や携わるスタッフを雇うのに,かなりの金額を要する。

NFBが1994年から提供を始めたNewsline for the Blindと呼ばれるサービスは,以上のような問題点を克服した全く新しい第3世代のサービスである。この方法によって,全国的なネットワークを通じ,全国紙だけでなく,地元の新聞や地域のニュースに,いつでも,どこからでも,アクセスすることができるようになった。その仕組みは次のようなものである。毎朝早く,ボルティモアのNational Center for the Blindのコンピュータが,USA TodayChicago Tribune, New York Timesのコンピュータにアクセスし,入手した新聞記事データを特別なフォーマットに変換して各地域にあるローカルサービスセンターに送る。さらに,ローカルサービスセンターは,地元の新聞や地域住民にとって必要な情報も,同じようにデジタル化し,提供することができる。

サービスに加入した視覚障害者には,すべてのローカルサービスセンターの番号リストが与えられているので,どこにいても最寄りのローカルサービスセンターに電話さえすれば,少なくとも上記の3紙の情報にアクセスすることができる。電話をかけると,システムは合成音声DecTalkによって新聞を読んでくれる。新聞社の知的所有権を保護するために,加入者には,暗証番号とID番号をそれぞれ付与している。

ネットワークとコンピュータの活用によって,人手を極力かけずに,瞬時にサービスを提供する,このNewsline for the Blindは,確かに新しい世代のサービスと呼んで良いだろう。

楢木 健一郎(ならきけんいちろう)

Ref: Jernigan, Kenneth. The Newsline Network: nationwide newspaper service for the blind. Interface 18 (3) 5-7, 1996