カレントアウェアネス
No.210 1997.02.20
CA1107
ナショナルCJKサービス(オーストラリア)
1996年6月3日,オーストラリア初の中国・日本・韓国語の文字をもったオンラインデータベースが,あしかけ8年間の準備期間を経て,サービスを開始した。三種類の言語,すなわちChinese,Japanese,Koreanの頭文字をとって名付けられた,このデータベースは,ナショナルCJKサービスとよばれ,オーストラリア国内の中国語・日本語・韓国語の図書館資料の書誌情報へのよりよいアクセスをめざして開発されたオンライン総合目録サービスである。
これまでは,ABNと呼ばれるオンライン総合目録サービスにCJK資料も他のすべての言語の資料と同様に収められてきた。しかし,ABNはローマ字以外の文字種を持ち合わせていないため,CJK資料もローマ字のかたちでしか表わすことができなかった。今回,ナショナルCJKサービスにより,書誌情報がローマ字だけでなく,漢字・かな・ハングル文字でしるされるようになった。これにより,オーストラリア国内のアジア言語資料の利用環境が一気に整った。検索において漢字,かな,ハングル文字が使用できることも大きな利点である。この場合は分ち書きについての配慮や読みの清濁の確定が不要である。中国語・韓国語はローマ字法になじみのない利用者もあり,検索の際のCJK文字使用はさらに効果的なようである。
CJK文字入力には,MASS(Multilingual Application Support Service)という150種以上の言語を扱える,シンガポール国立大学開発のシステムが使用されている。中国語を基準に開発されたので,日本語・韓国語はその仮名・ハングル文字について不満が残る。日本語に関しては,長音のローマ字表記が変わっていること(「放送」は「hoosooo」と入力)と,かなの連続入力が限られた範囲でしかできないことを除けば,はぼ日本語のワープロと同様に使用できる。
また,ナショナルCJKサービスはオーストラリア国内の中国・日本・韓国語資料の総合目録として機能する。それぞれの参加館はナショナルCJKサービスで総合目録として作成されたデータを,ローカルシステムにダウンロードすることができる。ちなみに,オーストラリア国立図書館では現在,ローカルシステムのデータは,書誌データ・所蔵データともに毎日,更新されている。
ナショナルCJKサービスはABNからは基本的に独立したデータベースであり,現在のところ,ABNへのデータの提供は行っていない。将来は,相互にデータを更新する予定で計画をすすめているが,実行には到っていない。
ナショナルCJKサービスは以下のようなさまざまな書誌情報源を活用し,データ量においてABNをしのいでいる。現在,書誌データ50万件,所蔵データ22万件が記録され,日々更新されている。書誌データの90%がCJK文字種を含むものである。―*米国議会図書館(LC)作成の1988年以降のモノグラフデータ及び1991年以降の雑誌データすべて,*OCLC/RLINからの自動マッチングによるダウンロード,*個別資料の検索・ダウンロード指示によるRLINからのダウンロード,*ABNの中国・日本・韓国語資料の書誌情報および所蔵情報,*ナショナルCJKサービスのオリジナル・カタログ。以上の他に,韓国のナショナルMARCや香港等の民間MARC,そして国立国会図書館作成の1993年以降のJ-MARCの利用が検討されている。
サービスヘの参加を希望する館は年間一定の料金を支払い加盟する。目録作業全般および検索がおこなえる完全参加型と,自館所蔵情報の追加および検索のみの部分参加型の2種類の参加形態がある。1996年6月に国立図書館1館,大学図書館7館,計8館で始まり,5カ月後の11月現在参加館数は18館(国立図書館1館,大学図書館13館,公共図書館4館)に増加した。今後は利用者教育,サービスの宣伝にもさらに力を入れ,改善を重ねていく予定である。
稲浜 みのる(いなはまみのる)
Ref:那須雅煕 オーストラリアの図書館ネットワーク 国立国会図書館月報(336)2-10,1989