1.3.3 図書館友の会とボランティア活動

 

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筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科  吉田 右子(よしだ ゆうこ)

(1) 「図書館友の会」とは

 アメリカの公共図書館は、コミュニティの文化の拠点として地域住民と密接に関わりあいながら発展してきた。住民は利用者として図書館を利用するだけでなく、図書館を支えるためにさまざまな活動を行っている。その多くは無償あるいは低報酬のボランティアによって支えられている。図書館ボランティアは図書館と一般住民を結ぶ架け橋として、アメリカの公共図書館において欠かせない存在となっている。

 アメリカでは図書館ボランティアは「図書館友の会」(friends of the library / library associates)を基盤として活動することが多い。図書館友の会とは、図書館の支援を目的に設立された団体である。友の会の支援形態は多様であるものの、ファンドレイジング(資金調達活動)はその中核的な活動となっている。これは日本の図書館ボランティアの多くが図書館業務の直接的な補助によって図書館を支援するのとは対照的である(1)

 アメリカの図書館友の会は個々の団体により活動は異なるが、図書館サービスのアドヴォカシーを目指すという点で共通の理念を持ち、その理念を実現させるためにボランティア活動を含む様々な支援活動を行なうのである。

(2) 友の会の活動

 具体的な友の会の運営には理事会の開催、役員選出、出版、寄付と会員の維持、ブックセール、ボランティア活動の運営、活動プログラムや活動方針の策定等の業務が含まれる。友の会では館長、図書館理事会、図書館職員と連携を取りながら、図書館とコミュニティに対して図書館活動にかかわる様々な活動を行っている。支援内容としては図書館活動の支援(障害者・高齢者・児童へのサービス、講演会、学習会、特別企画の援助)、館内業務支援(アドヴォカシー、図書館ガイドツアー、書架整理、資料整理)、図書館への支出(資料購入、メディア購入、建物修繕費、館内整備費)、資金調達(会員勧誘、ブックセール、バザー、寄付金集め)にわたる幅広い活動を展開してきた(2)

(3) 友の会の組織と活動

 友の会の多くは会員制であり、会員は会費を納めて図書館支援活動に従事する。たとえばクリーブランド公共図書館友の会(Friends of the Cleveland Public Library)の会員制度を例にとると、高齢者・学生会員($10.00)、個人会員($15.00)、家族会員($25.00)、「収集家」($50.00)、「愛書家」($100.00)、「守護者」($500.00)のランクに分かれている。また友の会のメンバーになると会員種別によって異なるいくつかの特典が用意されている。クリーブランド図書館友の会の場合、会報の頒布、書評誌の頒布、ブックセール、講演会への招待、図書館ギフトショップでの割引などが受けられる(3)

 ミネソタ州のルソー地域図書館友の会(The Roseau Area Friends of the Library :RAFL)はやや小規模な図書館であるが、地元ラジオ局の番組で図書館ニュースを毎週放送している。マスメディアを活用した図書館PRはアメリカではそれほど珍しいものではない。友の会では図書館アウトリーチプロジェクトとして病院に図書を配送するほか、乳幼児プロジェクト(TOT: Teaching Our Toddlers)では、病院で新生児と母親に図書と役に立つ資料を配布している。夏季には読書会、スライドの映写会、作家を囲む会、朗読会などを主催している。また図書館に対する様々な寄付を募って図書館の財政的な支援を行なってきた(4)

(4) 全米図書館友の会

 アメリカには大多数の図書館に友の会があり、コミュニティに応じた活動を展開している。こうした友の会の活動を支えているのが、友の会の全国組織「全米図書館友の会(Friends of Libraries U.S.A.: FOLUSA)」である。FOLUSAの活動目的は、図書館支援に関わる情報提供による友の会の支援、友の会のネットワーク構築、アドヴォカシーの推進であり、全米の友の会のクリアンリングハウスとしての機能を果たしている。読書活動とリテラシーの向上についてもFOLUSAは全国的な運動を展開し、重要な役割を果たしている(5)

 1979年に設立されたFOLUSAは現在では2,000人を超える個人会員、団体会員を有する団体に成長している。図書館活動を促進するため図書館支援活動情報の提供、ワークショップや講演会の開催などを通じて全国の友の会の活動を支えてきた(6)

 FOLUSAのウェブサイトには、友の会の活動を進めていくための様々な情報源が用意されている。資金調達の方法、アドヴォカシーの進め方など、実践に役立つノウハウが得られる他、規約、ミッションステートメントの例も掲載されている。

 FOLUSAはアメリカ図書館協会の年次大会にも参加し、友の会に関する情報の提供、ワークショップの開催、人的ネットワークの促進、友の会に関わる団体や理事会、財団に対する業務相談活動などを行っている。さらにFOLUSAが主催する顕彰制度もある。図書館支援活動全般にわたって成果をあげた友の会に贈られるBaker & Taylor Award の他、顕著な活動を表彰するBest Friends Awardsなどがある(7)

 出版活動にも力を入れており、最近では資金調達のためのアイデアを提供するGetting Grants in Your Community、アドヴォカシーの方法を扱ったMaking Our Voices Heard: Citizens Speak Out for Libraries、友の会活動のためのアイデア集である101+ Great Ideas for Libraries and Friends* (*Marketing, Fundraising, Friends Development and More!) を刊行している(8)



(1) 以下の文献にはアメリカ公共図書館におけるボランティア活動や友の会について、その理念が詳しく論じられている。友の会の活動において業務支援のためのボランティア活動は一部に過ぎず、公共図書館の理念を社会に訴えたり住民の要求を図書館に伝えることが主要な役割であることを、アメリカのコミュニティのあり方とともに明らかにしている。竹内悊. 草の根で支える図書館:アメリカ合衆国の事例から. みんなの図書館. 1997, (239), p. 30-37.

(2) Dolnick, Sandy ed. Friends of Libraries Sourcebook. 3rd ed, American Library Association, 1996, 313p.

(3) Cleveland Public Library. “Friends of the Cleveland Public Library”. http://cpl.org/friends-of-the-library.asp, (accessed 2007-02-05).

(4) Northwest Regional Library. “Friends of Library”. http://www.nwrlib.org/friends_roseau.htm, (accessed 2007-02-05).

(5) Friends of Libraries U.S.A.. “Who We Are”. http://www.folusa.org/about/who-we-are.php, (accessed 2007-02-05).

(6) Friends of Libraries U.S.A.. “History of FOLUSA”. http://www.folusa.org/about/history-of-folusa.php, (accessed 2007-02-05).

(7) Friends of Libraries U.S.A.. “Grants & Awards”. http://www.folusa.org/resources/grants-awards.php, (accessed 2007-02-05).

(8) Friends of Libraries U.S.A.. “Publications”. http://www.folusa.org/resources/publications.php, (accessed 2007-02-05).

Ref:

Dolnick, Sandy. Essential Friends of Libraries : Fast Facts, Forms, and Tips. American Library Association, 2005, 99p.

Dolnick, Sandy ed. Friends of Libraries Sourcebook. 3rd ed, Chicago, American Library Association, 1996, 313p.