E941 – 次世代学術コンテンツ基盤ワークショップ<報告>

カレントアウェアネス-E

No.152 2009.06.24

 

 E941 

次世代学術コンテンツ基盤ワークショップ<報告>

 

  国立情報学研究所(NII)において2009年6月12日,「次世代学術コンテンツ基盤ワークショップ」が午前と午後の二部構成で行われた。このワークショップは,6月11日から12日の2日間にわたり開催されたNIIオープンハウス2009のプログラムの一つである。

 午前の部は,「電子リソースアーカイブの展望」というテーマで,電子ジャーナルを始めとする電子リソースの安定的・持続的なアーカイブについて,3名の講演が行われた。日本女子大学講師の後藤敏行氏は「電子ジャーナルアーカイブの現状と課題」と題し,国内外の主な電子ジャーナルアーカイブの現状を整理した上で,商業出版社の利益保護とアーカイブの利用促進という相反する課題への対応策として,調整機関の設立とその果たすべき役割を提示した。さらに,その役割の一つとして,従来は出版社の主要顧客ではなかった途上国の研究機関への,アーカイブコンテンツの提供という方策を提言した。続いて,NII学術コンテンツ課の細川聖二氏が「NIIにおけるアーカイブへの取り組みとCLOCKSSの概要」,国立国会図書館総務部の川西晶大氏が「国立国会図書館におけるインターネット情報の収集制度化」と題した講演を行い,それぞれの機関におけるアーカイブへの取り組みを紹介した。

 午後の部は,「ひらめき,ひろがる,知の可能性(かたち)―CiNiiリニューアルとウェブAPIコンテスト―」というテーマで, ACADEMIC RESOURCE GUIDEを主催する岡本真氏の司会進行のもと,講演やトークセッションが行われた。まず,NII助教の大向一輝氏が「CiNiiリニューアル 徹底紹介」と題し,2009年4月にリニューアルしたCiNiiについて,ターゲットを一般ユーザに絞ったユーザビリティ設計やウェブAPIの公開,今後実現を目指す著者単位での検索等を説明した。続けて同氏より,「ウェブAPIコンテストを開始します」と題し,CiNii APIを利用したアプリケーションコンテストの概要説明があった。サンプルアプリケーションとして,ワークショップ当日に公開された携帯向けCiNiiや,CiNiiを利用して関連論文・関連講義を表示するシラバス検索システム「SyllaWalk」のデモが行われた。続くトークセッションは,嵯峨園子氏(ソシオメディア株式会社),高久雅生氏(物質・材料研究機構科学情報室),當山仁健氏(沖縄国際大学総務部),山田俊幸氏(山形大学附属図書館)の4名をスピーカーに迎えて行われた。「ペルソナ」(架空のユーザ)と「シナリオ」(架空のユーザがどういった場面でどのようにソフトを使うか)を用いた開発,引用・被引用文献のリンク公開等,様々な観点からウェブAPIコンテストに向けてのアイデアや要望が挙げられ,ワークショップ参加者を交えての活発な意見交換が行われた。

 各講演・トークセッションは,NIIが提供する学術コンテンツについて,改めて課題や今後の展開を考える好機となったようだ。特に,CiNiiウェブAPIコンテストについては,ワークショップ参加者の強い期待が感じられた。

(総務部情報システム課・原聡子)

Ref:
http://www.nii.ac.jp/index.php?page_id=317
http://cyprus.ex.nii.ac.jp/~kazukichi/mashup/
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20090612/1244823738
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090614/1244972106