E821 – 韓国の全国大学図書館大会

カレントアウェアネス-E

No.133 2008.08.13

 

 E821

韓国の全国大学図書館大会

 

 2008年7月9日午後から7月10日午前にかけて,韓国政府の教育科学技術部の主催,教育学術情報院(KERIS;CA1296参照),江原大学,韓国大学図書館連合会の主管による「2008年全国大学図書館大会」が江原道襄陽市で開催された。

 2001年の開始以来8回目を迎えた今大会は,2008年2月の政府組織改編により発足した教育科学技術部による大学図書館政策の方向性を紹介するとともに,国家レベルでの学術情報共同利用体制の基盤形成に関する協議,大学図書館に関する新しいサービスの動向の共有,大学図書館関係者の人的ネットワーク構築などを目的としたもので,約180の大学図書館・関連ベンダーが参加した。

 1日目に行われた教育科学技術部による大学図書館政策の方向性の紹介では,国家レベルの学術研究情報の生産・流通体系を構築すべく,(1) 学術研究情報の公的な共有体制の整備,(2) 学術研究情報にアクセスする窓口の一本化,(3) 効率的な生産・流通体制の構築を行うとされている。また具体的な事業としては,大学図書館統計システムの構築,学術情報の生産から流通までをデジタル形態で管理するリポジトリシステム“dCollection”(E750参照),社会科学分野の統計を中心とした数値データの原資料データベース構築,大学図書館司書を対象とした学術サービス専門家教育課程の開設などが紹介されている。発表資料には,主要な統計データも掲載されている。

 続いて,延世大学の事例をもとにした「大学図書館の情報サービス展開の方向」,およびOECDの統計データをもとにした「大学図書館が研究競争力に及ぼす影響」の2つの特別講義と,図書館長・課長会議と,実務担当者による5つの分野(整理,収書,相互貸借,レファレンス・閲覧,電算)別分科会が行われた。図書館長・課長会議では,図書館運営の現場からの意見と懸案を議論した後,米国南カリフォルニア大学図書館の戦略計画に関する講演が行われた。分科会の議論では,アーカイブズにおける文書管理(整理分科会),教員・学部とのリエゾンサービス(レファレンス・閲覧分科会),Library 2.0(電算分科会)など,新しい図書館サービスがテーマとして選ばれている。

 2日目には,各主管機関の事業紹介,「現代人のストレスの管理」と題する講演に加え,各分科会の議論の結果発表が行われた。なお両日とも,図書館関連ベンダーが製品・サービス・技術等を展示するブースを設置している。

 今大会の特設ウェブサイトを設け,発表資料等を公開しているKERISは,今大会について「知識社会において大学の研究競争力の主要な根幹をなす学術情報を提供する図書館サービスが,変化し,進まなければならない方向に対する意見交換・情報共有ができる良い機会を提供できた」と総括している。

Ref:
http://library.riss4u.net/
http://library.riss4u.net/download/2008/2008_lib.pdf
http://www.keris.or.kr/know/kn_news.jsp?bbsid=board15&gbn=view&ix=9420
CA1296
E750