カレントアウェアネス-E
No.103 2007.03.28
E625
Web2.0時代の図書館マーケティングを考える
2005年には「Library2.0」という業界用語が登場するなど,図書館界でもWeb2.0の急速な広がりに対応しようとする動きが活発化している(CA1624 参照)。中でも,ブログを活用したオンライン読書会(E194参照),フォークソノミーを取り入れたOPACの提供(E595参照)など,Web2.0のツールを活用した図書館サービスの展開が徐々に根付きつつある。このような活動は,図書館サービスをマーケティングするという観点からも、有効性が指摘されている。
Web2.0時代のマーケティングとは,これまでと何が違うのだろうか。2007年3月,Marketing Library Services誌に「Web2.0世界の7ステップのマーケティング戦略」と題する記事が掲載された。「Web2.0では,広報主体がメッセージをコントロールするのではなく,みんながメッセージを形作るのである」,「図書館サービスのマーケティングにあたっては,Web2.0を“エンジン”(動力)とみなし,メッセージを強める手段として活用すべきである」と述べるなど,興味深い内容となっている。
Web2.0を象徴する現象として,利用者の参加がある。ウェブ上には賞賛も非難も入り混じった多数のコメントが残され,それらは瞬く間に多数の他の利用者に共有される。こうして商品やブランドに関する広報のメッセージは利用者の評価に大きく作用されることから,広報主体がコントロールすることは困難である。この状況は,人々の意思決定のあり方にも影響を及ぼしていると言われる。例えばEdelman’s Trust Barometer社の調査によれば,ある会社に関する情報のソースとしてもっとも信頼しているものは“自分のような人(a person like me)”であり,その比率は2003年時点の調査では20%であったが,2006年には68%にも増大している。この調査の対象には,日本も含まれている。
記事では,このような実際の情報の伝達のあり方を踏まえて,的確にメッセージを利用してもらえるよう工夫し,また積極的に利用者との会話に参加していくことが重要であるとする。そして,以下のような7ステップのマーケティング戦略を示している。
- ソーシャルメディアについて学ぶ
- Web2.0マーケティング計画を策定する
- 会話に加わる
- 注目されるようにする
- 図書館コンテンツの伝達が行われやすいようにする
- マルチメディアの波にのる
- どれだけ関心を呼んでいるかをモニターし,進みながら学んでいく
例えば(3)では,ブログへのコメントやWikiの編集を利用者にも開放し,またソーシャルネットワークやウェブフォーラムなど,オンラインで行われている会話に参加することを勧めている。(5)では,ウェブコンテンツの利用者がブックマークしたり,タグ付けをしたりすることがしやすいようにするべきであり,ページごとに永続的URL(Permanent URL)が付与されるような適切なCMSを使用することを勧めている。そして(6)では,1日100万回以上もの動画がダウンロードされる現状を踏まえ,短い動画を配信することを勧めている。
記事に示されている内容は,あくまで汎用的・初歩的なアイデアである。安価で使いやすいツールが多数登場している現在,図書館のマーケティングは,まだまだ工夫の余地が残されているのかもしれない。
Ref:
http://www.infotoday.com/mls/mar07/Fichter.shtml
http://www.infotoday.com/mls/default.shtml
E194
E595
CA1624