E564 – 授業教材の電子化と著作権:コーネル大学がガイドラインを公表

カレントアウェアネス-E

No.94 2006.11.9

 

 E564

授業教材の電子化と著作権:コーネル大学がガイドラインを公表

 

 米国コーネル大学は2006年9月19日,米国出版社協会(AAP)と協同で,デジタル授業教材(Electronic Course Materials)の使用に関する新しい著作権ガイドラインを発表した。

 米国では,授業の概要,配布物,テストやレポートの課題といった授業教材をデジタル化し,ネットワーク上で学内または広く一般に公開する大学がある。このようなデジタル教材の作成・公開については,遠隔研修に係る著作権の権利制限を定めた2002年制定の“TEACH ACT”(CA1604参照)に記載がなかったため,各大学図書館ではどのように行えば合法なのかわからないといった状況にあった。このため,米国研究・大学図書館協会(ACRL)など6つの図書館協会が2005年12月,米国著作権法に規定されているフェア・ユース(Fair Use)にあたる場合には問題はないので萎縮するべきではないとする共同声明“Fair Use and Electronic Reserves”を出していた。

 今回コーネル大学が示した著作権ガイドラインでは,まず,デジタル化された著作物であっても紙媒体と同様の著作権法の原則が適用され,著作権者に無断で利用することは許されない,という原則が示されている。その上で,著作物の利用がフェア・ユースに該当するか,付属のチェックリストによる確認を求めている。そして,該当しなければ著作権者の許諾が必要であるとしている。また著作物をデジタル教材として初めて使用する際にも,同様に著作権者の許諾が必要であるとしている。このほか,ID/パスワードによるアクセス制限,授業期間終了後のファイル消去,著作権処理済の電子ファイルが別にある場合にはそれを用いることなどにも言及している。

 AAPは,各大学にもこれにならったガイドラインの策定を要望している。しかし,米国図書館協会(ALA)の著作権担当者は,Library Journal誌のインタビューに対し私見であると断った上で,コーネル大学のガイドラインはバランスがとれていて悪くはないが,フェア・ユースに当たるかどうかの判断は著作権者の許諾以前の問題であるとして,萎縮に対する懸念を示した。そして,各大学に対し,コーネル大学のガイドラインよりも“Fair Use and Electronic Reserves”を重視してほしい,としている。

Ref: 
http://www.copyright.cornell.edu/policy/Copyright_Guidelines.pdf
http://www.copyright.cornell.edu/policy/Fair_Use_Checklist.pdf
http://www.news.cornell.edu/pressoffice1/Sept06/AAPCopyright.shtml
http://www.libraryjournal.com/article/CA6374602.html