E2069 – Code4Lib JAPANカンファレンス2018,長野にて開催<報告>

カレントアウェアネス-E

No.356 2018.10.25

 

 E2069

Code4Lib JAPANカンファレンス2018,長野にて開催<報告>

 

  2018年9月1日から2日にかけて,県立長野図書館にて「Code4Lib JAPANカンファレンス2018」が開催された。6度目の開催(E1964ほか参照)である今回は,90人が参加し,2015年の東京開催に次ぐ参加者数となった。2件の基調講演のほか,口頭発表11件,ライトニングトーク12件が行われた。本稿では,開催概要や印象に残った発表の一部を紹介し,報告としたい。

    基調講演(1日目)は,兼宗進氏(大阪電気通信大学)より「データ教育の出番!2020年度からはじまる小中高の情報教育」と題して行われた。学習指導要領の改訂(CA1934参照)に伴い,小学校から高校におけるプログラミングの必修化が注目されている。本講演では,情報教育の新教育課程の概観が紹介されたほか,デモ動画にて日本語のプログラミング言語「ドリトル」を利用したプログラミングが紹介された。また,実際の事例としてデータベースを活用した授業の様子も紹介され,図書館の持つデータを活用したプログラミングの授業への期待が語られた。

    基調講演(2日目)は,渡邉匡一氏(信州大学)より「寺社資料の電子化・共有による新たな研究の展望と課題」と題して行われた。寺社資料に記された奥書や所蔵者名などから,僧侶たちは京都・奈良などの本山以外の各地でも,修行や勉強のため,多くの資料を書写していたことがわかる。本講演では,渡邉氏が調査対象としている特定の地域・時代・宗派に限っての事例が紹介されたが,それだけでも知のネットワークの大きな広がりを垣間見ることができた。資料の電子化・共有をはじめとした研究者・図書館職員・技術者の協働によって調査・研究が進展する可能性を感じさせる発表であった。

   口頭発表は,【オープンデータ】【新たな図書館の役割】【ショート】【コレクションの構築と検索】の4つのカテゴリーに分けて行われた。【オープンデータ】では,高橋菜奈子氏(千葉大学附属図書館)から,オープンデータ活用支援プラットフォーム“LinkData.org”を利用して作成した,小倉百人一首のLinked Open Dataデータセットについて発表があった。各機関が単独で公開しているオープンデータ画像をリンクさせることにより,新たな価値を生み出す可能性が期待される,印象的な内容であった。【新たな図書館の役割】では,朝倉民枝氏(株式会社グッド・グリーフ)から,デジタル絵本を作成するアプリ「ピッケのつくるえほん」を使った取組みについて発表があった。各地で開催されたワークショップの事例が紹介され,図書館のみならず医療・教育現場におけるICT活用の可能性を感じさせる内容であった。【ショート】では,新規プロジェクトの紹介や書影撮影デバイスの実演,検索可能なopenBD API(E1924参照)の実装に関する発表があった。【コレクションの構築と検索】では,江草由佳氏(国立教育政策研究所)から,「国立教育政策研究所教育図書館貴重資料デジタルコレクション」を例に,移行しやすく使いやすいデジタルコレクション公開サイトの構築について発表があった。維持や移行に費用をかけられず,死蔵されてしまうデジタルコレクションが少なくない中,HTML・CSS・JavaScript・JPG・PDFなどの静的なファイルだけを使うことによって,ウェブサーバさえあればコレクション画像を公開できる事例が紹介された。

   ほかに,ライトニングトーク・協賛団体セッション・アンカンファレンス・Ask Anythingが行われた。どのセッションにおいても,発表者から実に多彩なテーマが提示され,会場からも活発な質疑や情報提供がなされるなど,盛り上がりを見せた。また初日の午前中には,本カンファレンスに先立ってプレカンファレンスも開催され,“Slack”と“ORCID API”の体験が行われた。

  本カンファレンスは例年になく初参加者が多く,「一般のライブラリアンに広く門戸を開放することで図書館における情報技術活用を促進し,図書館の機能向上と利用者の図書館に対する満足度向上を目指」すという,Code4Lib JAPANの理念を体現したカンファレンスであったと感じた。また,貴重な発表を聞くことができただけでなく,技術者や図書館関係者,研究者といったそれぞれの立場の参加者と垣根を越えた交流ができ,大変有意義な時間であった。随所でそれぞれが行っている活動への勧誘もあり,今後の協働による大きな可能性を感じた。

   最後に,快適な環境下で本カンファレンスに参加できたのは,会場を提供してくださった県立長野図書館や,実行委員等関係者の皆様,ネットワーク環境の提供を始めとした各協賛企業・団体の皆様のご尽力とご協力の賜物である。この場を借りて,感謝の意を表したい。

   なお,発表の映像はYouTube,実況ツイートのまとめはTogetter,講演・発表スライドはWikiサイトで公開されている。ぜひご覧いただきたい。

信州大学附属図書館・湯本寛深,鈴木映梨香

Ref:
http://www.code4lib.jp/
http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2018
http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2018/program
https://togetter.com/li/1262361
https://www.youtube.com/playlist?list=PL5nlLQbMTnyYzDwgWDGVHvVHqCPGk6pf-
https://dolittle.eplang.jp/start
http://hdl.handle.net/10091/00020800
https://www.slideshare.net/tnanako64/ogura-lod-at-code4lib20180901
http://idea.linkdata.org/idea/idea1s2398i
https://www.slideshare.net/tamieasakura/ss-112708425
https://www.pekay.jp/pkla/ipad
https://www.slideshare.net/yegusa/20180902-c4ljp2018
https://www.nier.go.jp/library/rarebooks/
E1964
E1924
CA1934