E1992 – 古典籍画像を見るなら,新日本古典籍総合データベース!

カレントアウェアネス-E

No.341 2018.02.08

 

 E1992

古典籍画像を見るなら,新日本古典籍総合データベース!

 

 国文学研究資料館(以下「当館」)は2014年から「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」を進めている(E1954参照)。この一環として,古典籍のポータルサイト「新日本古典籍総合データベース」(以下「新DB」)を構築し,2017年10月27日に正式公開した。

 新DBは,当館が長年にわたり構築してきた日本古典籍総合目録データベースの書誌情報を活用し,国内外の機関が所蔵する古典籍の画像情報と併せ公開したものである。信頼ある書誌情報に,あらゆる分野の古典籍画像を紐付け,誰でも見やすく活用しやすい形を目指した。この「誰でも見やすく活用しやすい形」について,5つの観点から紹介したい。

●気軽な検索が可能

 多くのデータベースでは,書名や著者名等を知らなければ検索できない。もっと気軽に,たとえば「ポスターに使いたいので古典籍に描かれた犬の絵を見たい」という使い方はできないものか。新DBでは,画像情報にタグ(挿絵等に対応したキーワード)を付すことで,そうした検索を実現した。本文検索(翻刻テキスト検索)とあわせ,タグもさらに充実させ,利便性をさらに高めたい。

●永続的なアクセスを保証

 画像情報にはすべてDOIを付与している点も特長といえる。DOIにより画像への永続的アクセスを保証しているため,画像利用者が,DOIを論文等に明記することで,論文等の検証可能性が高まる。新DBから画像を公開している他機関にとっても,DOIの付与はひとつのメリットとなるし,広く新DBからの公開を促す原動力にもなるだろう。

●画像が見やすく活用しやすいビューアを採用

 新DBでは,デジタル画像相互運用のための新しい国際的取り組みであるIIIF(International Image Interoperability Framework:トリプルアイエフ)に対応したビューアを採用した。

 従来のデジタルアーカイブでは,画像は公開元でしか見られなかった。しかし,IIIFは,画像へのアクセスを標準化し,相互運用性を確保するものであり,マニフェストファイル(一定のルールの下に当該画像の情報をまとめたもの)さえあれば,他のビューアでも閲覧可能である。さらに,複数画像を並べての表示,アノテーション情報の付与やトリミングといった利用もできる。当館と連携する人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)では,複数のデジタルアーカイブで公開された画像を集約して同時に見せるなど,キュレーション機能を有したAPIを提案,研究ツールとしての可能性を示唆している。

 IIIFは比較的新しい取り組みであり,マニュアルや実例が多くはなく,マニフェストファイルの生成にあたってはその記述ルールと当館書誌との整合が難しい点など,苦労する点もあるが,IIIFを活用して画像タグ検索,くずし字検索の実装ができ,様々な可能性も広がっている。今後,国内外の動きを注視しつつ進めていきたい。

●ライセンスが明確で利活用が容易

 当館をはじめいくつかの機関が所蔵する古典籍の画像についてはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下「CCライセンス」)で公開しており,所蔵者の了解を得次第,拡大していく予定である。

 このことに関し,「著作権保護期間が満了している古典籍をCCライセンスで公開するのはなぜか」との質問をよく受ける。CCライセンスを採用したのは,画像の利用を促進するためであり,利用条件を誰でも(機械でも)認識できる形で明示することが必要と考えたためである。

 古典籍は写本・刊本いずれであっても「一点物」であり,すべてが違うものといえるため,所蔵者情報が不可欠である。当館としては,引用・転載など利活用する際に,所蔵者情報を明記するよう今後も利用者に求めたい。再利用する他者にも所蔵者を示すには,何らかの統一的なライセンスで簡単に表示する仕組みがなければならない。それは,他国の利用者でも条件を読解しうる仕組みであると望ましい。独自にライセンスを作成しようとしても,開発はきわめて困難であるとともに,社会一般への浸透も難しい。そこで,一般的な認知度も高いCCライセンスを援用した。このことにより,当館所蔵古典籍の画像については,利用の都度問い合わせすることなく利用可能となっている。

●外部サービスとの連携

 正式公開とともに,CiNii Booksとの連携を開始した。この連携は,CiNii Booksの検索結果画面から新DBの画像に直接アクセスして閲覧できるというものである。対象は,新DBで画像公開しているもののうち,CiNii Booksにも書誌が登録されている(NCIDを持つ)ものである(2018年1月現在で約2,000件。今後拡大予定)。現時点では国内の電子リソースのデータ共有サービスであるERDB-JP(E1678参照)を介した連携であるが,今後はOAI-PMH等を用いた自動的な連携を進めたいと考えており,検討しているところである。ほかにも他の外部サービスとの連携を検討しており,順次実装していく予定である。

 このデータベースはまだ公開されたばかりである。コンテンツの充実,検索機能の高度化等,今後さらに成長させ,いずれは「古典籍画像を見るなら,新日本古典籍総合データベース!」と世界中の人々に利用してもらうことができればと願っている。

国文学研究資料館・松原恵

Ref:
https://kotenseki.nijl.ac.jp/
http://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/
http://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/images/kotensekiDB-pamphlet-s_20171027.pdf
http://codh.rois.ac.jp/iiif/
http://iiif.io/community/consortium/
https://www.nijl.ac.jp/pages/database/opendata.pdf
http://www.nii.ac.jp/news/release/2017/1027.html
https://erdb-jp.nii.ac.jp/ja
E1954
E1678
E1754