カレントアウェアネス・ポータルは、図書館界、図書館情報学に関する最新の情報をお知らせする、国立国会図書館のサイトです。

E1769 - 東アジア地域書誌コントロールの動向 国際フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.298 2016.02.18

 

 E1769

東アジア地域書誌コントロールの動向 国際フォーラム<報告>

 

 2016年1月9日,大阪学院大学で日本図書館研究会情報組織化研究グループ主催の「東アジア地域における書誌コントロールの動向に関する国際フォーラム」が開催された。同フォーラムでは,日中韓における書誌コントロールの現状について,Linked Open Data(LOD;CA1746参照)やBIBFRAME(E1386参照),RDA(CA1767参照)などを切り口に,夏翠娟氏(上海図書館システム・ネットワークセンター),朴志英氏(漢城大学),渡邊隆弘氏(日本図書館協会目録委員長・帝塚山学院大学)が発表を行ったのち,木村麻衣子氏(学習院女子大学)をコメンテータに迎えてパネルディスカッションが行われた。以下,その内容を報告する。

●中国大陸地区における書誌コントロールの現状:特にBIBFRAMEとLODに注目して(夏翠娟氏)

 中国の図書館では,中国語資料に『中国文献編目規則第2版』,洋資料に『英米目録規則第2版』(AACR2)とRDAを用いて目録を作成している。RDAの導入状況は,上海図書館が2013年7月から洋資料にRDAを採用したほか,中国の大学図書館コンソーシアムであるCALIS(CA1443参照)では,2015年5月から日本語とロシア語を除く外国語資料にRDAを採用している。また,2013年よりRDAに準拠した国家規格である『资源描述』の制定が進められている。 

 続いて,BIBFRAME2.0に基づいた「上海図書館家谱知识库系统」(Genealogy Knowledge Database)の試みが紹介された。本システムでは,地名にURIを付与して提供するGeoNamesのデータを,CNMARCフォーマット(中国国家図書館が提供する書誌データフォーマット)で作成した系譜データに加えるなどしてBIBFRAMEフォーマットに変更している。オントロジー(知識を表現するための語彙あるいは基本概念)はBIBFRAME2.0に基づくが,GeoNames,Schema.org(E1192参照)などBIBFRAME以外の語彙リストも取り入れ,あわせて上海図書館独自の語彙も定義したとのことである。本システムのオントロジーはRDFsでコード化し,LODの形で公開されている。

 なお上海図書館の典拠ファイルや書誌データで用いられる語彙は,「オープンデータプラットフォーム」で見ることができる。また,上海図書館はOPACの書誌データを2016年5月からLODで提供開始する予定である。

 夏氏は,BIBFRAMEが未完成で現状は多くの問題があることを指摘しつつも,インターネット全体と融合できる点が有用であるとした。そして,各国の図書館と協力して新しい環境に対応してきたいと述べた。

●韓国における書誌コントロールの動向:RDA,BIBFRAME,LODを中心に(朴志英氏)

 韓国では,韓国図書館協会が『韓国目録規則第4版』(KCR)をRDAに対応して改訂作業中であり,2016年1月に新版の目次案を公開する予定である。また韓国国立中央図書館(NLK)では,2015年にRDAのMedia typeなどの要素をKORMARCに追加した。2016年にはKORMARC(CA1057CA1060参照)の典拠フォーマット(KS X 6006-4)の改正と配布を行う予定である。 

 LODへの取組として,NLKが2011年から開始した書誌データ,著者データ,件名データのRDF化および韓国内外のLOD提供機関とのデータ連携が紹介された。

 韓国ではBIBFRAMEに関する国家レベルの活動は見られないとのことであったが,研究がおこなわれており,その事例として朴氏が2015年に行った研究「BIBFRAMEモデルを利用した公共図書館のローカル・データと書誌データの連携方策」の紹介があった。朴氏は,韓国の公共図書館では,推薦図書リストなどがExcel形式のデータで提供され,OPACの書誌データが活用されていない点に着目し,書誌データをLinked Dataの書誌データモデルの一つであるBIBFRAMEを用いて提供することで,各図書館のサービスと書誌データの連携が促されるのではないかと述べた。 

●日本における書誌コントロールの動向:目録規則を中心に(渡邊隆弘氏)

 日本では国立国会図書館(NDL)が2013年から外国刊行の洋図書等に対するRDAの適用を開始したが,その後,他の図書館では導入されていない。 

 『日本目録規則』(NCR)については,日本図書館協会目録委員会が2010年9月に「『日本目録規則』の改訂に向けて」で改訂方針を表明し,2013年からNDL収集書誌部と連携し,RDAに対応した形での改訂作業を進めている(E1496参照)。2015年からNDL書誌調整連絡会議のウェブサイトで,「新しい『日本目録規則』(新NCR)」として部分的な条文案を公開しており,2016年3月には「体現形の属性」の主要な部分の条文案を部分的に公開する予定とのことである。新NCRは2016年度中に,新規則案(全体案)の公開および検討集会開催や新規則案を適用した試行データの作成・評価が行われる予定である。

 現在のところ,新NCRの目次構成は「総説」「属性」(属性の記録,アクセス・ポイントの構築)「関連」となる予定である。また,日本ではBIBFRAMEに関して大きな動きは今のところないが,NACSIS-CATが2020年にシステムの大規模見直しを行うことから,今後動きが出てくる可能性があるとのことであった。

 LODについては,2014年にNDLがウェブサイトを開設したほか,書誌,典拠,震災関連のデータをLODとして提供しているとのことである。また,国立情報学研究所がCiNii上のタイトル,著者名などのデータをRDFで提供している。

●パネルディスカッション

 登壇者同士の質疑応答と参加者から登壇者への質問が寄せられた。この中で特に興味深かったのは,システムをRDAに対応させる場合の「著作」の問題である。木村氏からは日中韓の書誌データは「著作」に該当する統一タイトル典拠レコードの登録が不十分である現状が示され,「著作」を前提とする目録規則であるRDAに対応した場合,大きな問題になるだろうとの指摘があった。

 一方で古典籍や漢籍などは,どこからどこまでを一つの「著作」とするか判断が難しいという意見もあった。参加者からは,国文学研究資料館でのデータ作成の事例として,『平家物語』とその異本である『源平盛衰記』の2つの「著作」の切り分けの難しさが挙げられ,こうした「著作」の識別は日中韓共通の問題となり,今後も情報共有を行う必要性があると感じた。

東京外国語大学学術情報課・村上遥

Ref:
http://www.loc.gov/bibframe/docs/index.html
http://162.105.139.36:8104/newspublisher/ckeditor/uploader/upload/fileupload/CALIS联合目录外文编目RDA政策声明1430813678595.pdf
http://gen.library.sh.cn/demo
http://jp.library.sh.cn/jp/home/index
http://ontology.library.sh.cn/ontology/view
http://catwizard.net/posts/20141122223122.html
https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin10-2-1.php
http://www.geonames.org/
http://schema.org/
http://www.nl.go.kr/kormarc/
http://www.nl.go.kr/kormarc/notice/notice_view.jsp?board_no=8082&site_code=kormarc%C2%ACice_type_code=1%C2%A4tPage=0&srch=&searchWord=&cate_no=0
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/mokuroku/20100917.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/data/ncr/index.html
E1386
E1192
E1496
CA1746
CA1767
CA1443
CA1057
CA1060