E1610 – マイクロ・ライブラリー憲章の制定と今後への期待

カレントアウェアネス-E

No.267 2014.09.26

 

E1610

マイクロ・ライブラリー・ライブラリー憲章の制定と今後への期待

 

 2014年も8月29日から三日間にわたり「マイクロ・ライブラリーサミット」が開催され,無事終了した。このサミットは,マイクロ・ライブラリー(私設図書館)の顕在化と,お互いの経験や設立の想いの共有化に意義があると考え,企画,実行しているものである。2013年に開始したもので,今年で2回目となる。

 2013年は,15のマイクロ・ライブラリーと2つのユニークな小規模本屋を紹介し(E1468参照),本年は,さらに12の活動事例と2015年度開設予定の注目すべき2つのマイクロ・ライブラリーを紹介した。また,全世界20,000か所で巣箱型の本箱を設置している「Little Free Library」の創設者ボル(Todd Bol)氏を米国よりお招きし,活動をご紹介いただいた(E1603参照)。

 サミット等の交流を通じて,マイクロ・ライブラリーの連携が,全国的,国際的な広がりを持ち始めている。このような状況を視野に入れ,マイクロ・ライブラリーのより一層の形成を促す目的で「マイクロ・ライブラリー憲章」をサミットにおいて採択し,また広く憲章への同意を求めることにした。

 憲章の中身については,以下のとおりである。

 マイクロ・ライブラリー憲章

 すべてのマイクロ・ライブラリーはこの憲章に同意し,
  それぞれの自由な発想で,創意工夫を続ける。

 マイクロ・ライブラリーとは何か?
  本があり,ひとが集まる
  誰にも妨げられず,好きな本を読める
  本を共有する・体験を共有する
  本棚を眺めれば人々が見えてくる

 そのために次のことを応援します
  本を読み,ひとと話す
  本を薦める,ひとを紹介する
  面白さを共有し,自己を表現する
  多様性と新しい経験を提供する
  落ち着ける場を提供する
  本やテーマを決めて集まる
  地域と社会に開かれている
  他のマイクロ・ライブラリーと交流する

 前半の「マイクロ・ライブラリーとは何か?」は,すべてのマイクロ・ライブラリーに共通することを示している。後半の「そのために次のことを応援します」は,実践が推奨されることを列挙し,今後の望まれる方向性を示している。この後半の項目については,すべてを満たす必要はない。また一般的な事項をあげるにとどめており,同意者には,自らが望む活動方針に基づき,例えば「子育ての場にする」,「学びあいの場にする」,といった項目を書き添えることを推奨している。それぞれのマイクロ・ライブラリーが特色を持つことを歓迎し,多様なマイクロ・ライブラリーの在り方の模索を促すとともに,参加型で憲章が作り上げられていくことを意図したものである。

 なお,この憲章に同意し,参加の意思を表明する場合には,掲載しているウェブサイトにアクセスし,PDFを印刷し署名して図書館に掲示するか,あるいは自館のウェブサイトに憲章へのリンクを貼ればよい。これにより,憲章同意者となることができる。

 この憲章の意義は,以下のとおりである。
(1)マイクロ・ライブラリーの賛同者を増やし,その定義を確立していく。
(2)自らマイクロ・ライブラリーを宣言し,参加意識の確認を行うことを通じ,マイクロ・ライブラリーが顕在化していく。

 (1)のマイクロ・ライブラリーの定義に関しては,拙著「新時代におけるマイクロ・ライブラリー考察」(CA1812参照)の中でも私なりに定義を行っているが,より多くの知見が集まり,さらに時代の流れを汲んだ定義が,公開型で確立されることを期待している。また(2)は,活動に取り組む人たちが自ら参加意識の確認をすることにより,マイクロ・ライブラリーの顕在化と社会への広がりを期待している。

 マイクロ・ライブラリーの社会的な認知を広め,相互の連携により,より継続性の高い社会活動にしていくことが望ましいと考え,このような憲章を制定したのである。また,国際的にも多様なマイクロ・ライブラリーがあり,日本と世界の人が知恵と経験を分かち合い,より優れたマイクロ・ライブラリーの活動につながるという夢も託している。

 以上が,マイクロ・ライブラリー憲章の内容と意図である。この憲章の制定をはずみに,マイクロ・ライブラリー活動が,より広がり,定着し,一人でも多くの人が本に触れ,本を通じて人と人が出会って,知的な交流が広がることを期待したい。

まちライブラリー提唱者/森記念財団/大阪府立大学・礒井純充

Ref:
http://micro-library.com/charter/
http://opu.is-library.jp/ml/mls2014/
http://opu.is-library.jp/ml/micro-library-summit2013/
http://littlefreelibrary.org/
E1468
E1603
CA1812