E1288 – 米国の電子書籍の利用と読書習慣に関する調査レポート

カレントアウェアネス-E

No.214 2012.04.26

 

 E1288

米国の電子書籍の利用と読書習慣に関する調査レポート

 

 2012年4月4日,米国の調査機関Pew Research Centerは,同国における電子書籍の利用実態と読書習慣についてのレポート“The rise of e-reading”を公表した。電子コンテンツが利用できるようになったことで読書量が増え,また書籍を借りるより買う傾向が強まっているとしている。

 同レポートは,複数の調査結果を分析したものである。分析対象の調査は,特に電子書籍の利用と読書嗜好をテーマに2011年11月16日から12月21日まで行われたもの,クリスマス商戦が電子書籍端末(KindleやNook等)やタブレット端末(iPadやKindle Fire等)の普及にどのような影響を与えたのかを調べた2012年1月5日から8日までと,1月12日から15日までのもの,電子書籍端末の普及が電子書籍の利用状況に与えた影響を見るため過去1年間の読書経験を尋ねた1月20日から2月19日まで実施されたものである。以下,同レポートのポイントを紹介する。

 米国の18歳以上の成人の約5分の1は,過去1年間に電子書籍を利用したことがある。電子書籍を利用したことがあると回答した人の割合は,2011年末のクリスマス休暇の前後で17%から21%に増加しており,これは,電子書籍端末やタブレット端末の所有者の割合が,この期間で顕著に増加したことと一致している。

 電子書籍を利用したことがあると回答した人の過去1年間の読書状況は,平均24冊である。電子書籍を利用したことがない人は,平均15冊であった。電子書籍を利用する人は,どのようなフォーマットであれ,本をよく読む傾向にある。

 電子書籍端末所有者の35%,タブレット端末所有者の41%は,電子コンテンツの出現により,それ以前に比べて多く読むようになったと回答している。また,電子書籍端末やタブレット端末を所有している期間が長い人ほど,より多く読むようになったと回答している。

 電子書籍での読書傾向は増加しているが,依然紙の書籍での読書が優勢である。2011年12月の調査結果では,米国の成人の72%が過去1年間に紙の書籍を読んだと回答し,電子書籍で読んだと回答したのは17%であった。しかし,2010年6月との調査結果と比較すると,紙の書籍を読んだ人の割合が減り,反対に電子書籍で読んだ人の割合が増えていることから,紙から電子へ読書媒体が移りつつある。

 紙の書籍の利用者のうちの54%と電子書籍の利用者のうちの61%は,書籍を借りるよりも買う方を好み,反対に,オーディオブックの利用者のうちの61%は買うよりも借りる方を選択している。電子書籍端末やタブレット端末の所有者は他のケースと比べて,より借りるよりも買う傾向にある。

 最近読んだ本について尋ねると,回答者全体の48%がその本を購入したと答え,図書館から借りたと回答したのは14%であった。また,電子書籍を利用しているインターネットユーザーに対し,求める電子書籍を最初に探すのはどこからかと尋ねたところ,オンライン書店あるいはウェブサイトと回答したのは75%で,図書館で探すと答えたのは約12%だった。

(関西館図書館協力課・菊池信彦)

Ref:
http://libraries.pewinternet.org/2012/04/04/the-rise-of-e-reading/
http://libraries.pewinternet.org/files/legacy-pdf/The%20rise%20of%20e-reading%204.5.12.pdf