E1271 – 電子情報資源管理に関する標準の現状とERMIデータ辞書の今後

カレントアウェアネス-E

No.211 2012.03.08

 

 E1271

電子情報資源管理に関する標準の現状とERMIデータ辞書の今後

 

 米国情報標準化機構(NISO)が,2012年1月付けで,電子情報資源管理(Electronic Resource Management:ERM)に関する標準とベストプラクティスをテーマとしたレポート“Making Good on the Promise of ERM: A Standards and Best Practices Discussion Paper”を公表した。

 これは,電子図書館連合(DLF)のERMイニシアティブ(ERMI)の仕事を引き継いだものである。ERMIは,2002年にNISOとDLFの共催ワークショップをきっかけとして誕生した。2004年に発表した「DLF/ERMイニシアティブ報告書」ではデータモデルやデータ辞書等の以後のERMシステムにおける事実上の標準となる仕様を示し,2006年に開始したフェーズ2ではSUSHIやCORE等のプロトコルの開発を行う等の成果を残した。しかしながら,その後,ERMシステムの開発を中止するベンダが現れたり,ERMシステムの実装の遅れや失敗に対して導入図書館から不満の声が挙がる等,ERMIが定めた仕様は実現へのハードルが高いことが明らかになってきたという。

 このような背景を受け,同レポートでは,ERMに関する様々な標準及びベストプラクティスを分析し,ERMIデータ辞書との比較(マッピング)を試み,データ辞書に対して提言を行っている。

 レポートの中心部分である第3章では,OpenURL,KBART,IOTA,DOI,MARC21,ONIX for Serials (SOH,SPS, SRN),TRANSFER,CORE,COUNTER,SUSHI,ONIX-PL,SERU,I2,WorldCat Registry,Shibboleth,vCardという18種類の標準・ベストプラクティスの概要や分析が述べられており,その結論が「リンクリゾルバとナレッジベース」「著作,体現形,アクセスポイント」「費用と利用統計」「ライセンス条項」「機関IDを使ったデータ交換」の5領域に分けてまとめられている。

 例えば,「リンクリゾルバとナレッジベース」では,ERMにおいてはリンキングが非常に重要であり,そこではOpenURLが主要な役割を果たすようになっていることや,正確なリンキング等を目的としてナレッジベースのデータフォーマットの標準化を目指しているKBARTと,OpenURL形式のURLの品質を数値で評価するツールを開発しているIOTAプロジェクトへの期待や要望が述べられている。

 また,「費用と利用統計」では,利用統計項目の標準であるCOUNTERがOpenURLのように基盤となる存在であることや,あわせて統計データの自動的な取得を可能とするSUSHIプロトコルも重要であること,図書館システム及びERMシステム間で費用等の会計データを交換するためのCOREプロトコルも有益だが現在のところ目立った採用例がないと述べられている。

 分析対象の仕様のうちマッピングできなかったものは,OpenURL,IOTA,DOI,WorldCat Registryの4種類とされている。

 分析結果を踏まえ,レポートでは,今後もERMIデータ辞書の更新・維持を続けていくよりも,ERMの特定の機能に絞った小規模な仕様策定への支援を続け,それらの相互運用性を追求することを推奨している。その理由としては,300項目を超えるデータ辞書の管理は多大な時間を必要とすることや,更新に応じてERMシステムが継続的に改良されていくとは考えづらいことが挙げられている。

 その他,第4章ではERMのワークフローに関しても触れられており,あわせて付録ではベストプラクティスを紹介した文献やワークフロー図のリストも掲載されている。

Ref:
http://www.niso.org/apps/group_public/download.php/7946/Making_Good_on_the_Promise_of_ERM.pdf
http://www.niso.org/apps/group_public/document.php?document_id=7539
http://old.diglib.org/standards/dlf-erm02.htm
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/infocat/dlf102.html