E1262 – ILLにおいて効率的な資料配送を実現するための推奨指針

カレントアウェアネス-E

No.209 2012.02.09

 

 E1262

ILLにおいて効率的な資料配送を実現するための推奨指針

 

 米国情報標準化機構(NISO)が,2012年1月19日付けで,相互貸借(ILL)等の資源共有活動において,図書館間の物理的資料の配送にかかる時間やコストを削減することを目的とした推奨指針「図書館資料の物理的配送」(Physical Delivery of Library Resources)を発表した。このような指針の策定に至った背景として,第1節では,電子リソースの増加にもかかわらず米国の多くの図書館では図書やAV資料といった物理的資料の配送が依然として大きな課題であると説明されている。

 続く第2節から第4節にかけて,「配送の管理」「配送の自動化」「資料の移動」という3つのテーマが扱われている。

 第2節「管理」では,複数の配送サービスを接続する際の調整,配送サービスの管理体制や果たすべき役割,トラブル記録や統計等の情報管理の重要性,配送業者との契約における留意点,資料梱包の仕方やサービスの質の測定方法等に関する基本方針の策定について説明されている。また,資料の配送回数を削減するための手段として,利用者が返却した資料を所蔵館に返送するのではなくそのまま自館で保持しておく“floating collections”という考え方についても紹介されている。この方法は,特に,分館を多く抱えるような公共図書館のネットワークで導入されることが増えてきているという。その他,依頼館を介さず所蔵館から直接利用者へ資料を届けるサービスや,海外への発送についても触れられている。

 第3節「自動化」では,例として,自動搬送システムと宅配便管理システムという2種類のシステムが紹介されている。自動搬送システムは自動書庫でも使用されているもので,貼付されたバーコードやRFIDタグによって資料を特定し,図書館システムと通信して宛先を取得する等の処理を自動的に行うことができるという。配送作業の高速化や人的コストの削減といったメリットがあるが,導入には機械本体の他にも様々な費用が必要である。また,物流業界から多くのソフトウェアが市販されている宅配便管理システムは配送ルートの管理等を行ってくれるもので,数百もの集荷地点を持つような大規模な配送サービスでは必要になる場合があるとしている。

 第4節「物理的移動」では,現場の担当者がスムーズに間違いなく資料をやり取りするための実務的なトピックが取り上げられている。まずは,配送前の処理として,資料に添付するスリップに記すべき項目とその添付の仕方,資料の梱包方法や配送用コンテナの種類について,多くの画像・写真を使って具体的に述べられている。スリップの添付や梱包の方法については,コスト面や作業フローに与える影響だけでなく,環境への負荷(E1058参照)という観点からも比較されている。続いて,運送作業を外注することのメリットとデメリット,資料の仕分け作業を集中化させるかどうかという問題,資料を集荷するタイミング,RFIDやGPS等を用いた荷物の追跡等について解説されている。

 最終節では,更なる情報源として,図書館資料の配送サービスに携わる図書館員らによる“Moving Mountains”プロジェクトが紹介されている。そのウェブサイトでは,参考文献や関連業者のリスト,提案依頼書(RFP)のサンプル等の情報が掲載されており,メーリングリストも開設されている。

Ref:
http://www.niso.org/publications/rp/rp-12-2012.pdf
http://movingmountainsproject.wordpress.com/
E1058