CA771 – 第二回図書館及び情報サービスに関するホワイトハウス会議 / 千代由利

カレントアウェアネス
No.147 1991.11.20


CA771

第二回図書館及び情報サービスに関するホワイトハウス会議

21世紀に向けて,米国民の情報需要に応える望ましい図書館及び情報サービスは如何にあるべきか。第二回『図書館及び情報サービスに関するホワイトハウス会議(White House Conference on Library and Information Service,略称 WHCLIS)は,1991年7月9〜13日,首都ワシントンのナショナル・コンベンション・センターで開催された。

1974年フォード大統領により法制化されたWHCLISは,1979年,カーター大統領により第一回会議が召集され,以後十年ごとに開催されるはずであったが,財政事情,特に文教予算の削減などにより開催が延期されていた。1988年8月8日,レーガン大統領が第二回会議を1989年9月1日以降遅くとも1991年9月30日迄に開催する,会議のために600万ドルの予算を計上する等を定めた決議案(HJRes 90)に署名し(PL100-32),この法律に基づき,ブッシュ大統領が召集したものである。

政府からブッシュ大統領夫妻,クエール副大統領夫人,アレギザンダー教育長官,議会からポール・サイモン他4名の上下両院議員が出席した。大統領は,情報で結ばれた世界一偉大な国の構想を語った。唯一の図書館界出身議員メージャー・オーエンスは,政府の図書館予算削減政策を激しく糾弾すると共に,ブッシュ大統領が打ち出した教育目標『2000年のアメリカ』構想に,図書館は中心的役割を担うべきであると訴えた。

第二回会議のテーマ『識字,生産性,民主主義のための図書館及び情報サービス』の下に,前年から予備会議で討議を重ねてきた,全米各州及び準州からの2,000人を超す参加者は,10のテーマ別会議(アクセス,管理,マーケティング,全国情報政策,ネットワーキング,人事,保存,サービス,技術,研修)及び28の小部会に分かれ,各代表が持ち寄った700に及ぶ勧告を討議した。最終日の7月13日,9時間に亘る投票の結果,94の勧告が採択された。最終的な会議報告は120日以内にブッシュ大統領に提出され,その後90日以内に大統領の意見を添えて議会に提出されるが,11月半ば頃が予定されている。

採択された勧告の主なものは次のとおり。

  • 教育省の名称を教育・図書館・情報サービス省とし,図書館・情報担当次官を置く。
  • 連邦の図書館予算を増額する。
  • 図書館は『2000年のアメリカ』運動の中心に置かれるべきであり,その主たる目標は文盲の一掃である。(7月15日,National Literacy Act of 1991が上下両院を通過)
  • WHCLISを10年毎に開催する完全な予算措置を講じる。
  • 議会は国家資料保存政策を採択する。
  • 全米研究及び教育ネットワーク(National Research and Education Network:NREN)構築のために予算措置を講ずる。(7月11日,これを含むHigh Performance Computing Act of 1991[HR656]が下院を通過)

ちなみに,第一回大会の勧告に基づきNational Library and Information Services Act及びNational Library Resources Sharing Actの2法案が1980年第96議会に提出されたが,会期切れ廃案となった。

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WHCLISの一環として,7月11日,国内及び国際的情報ネットワーク推進に関する上下両院合同公聴会が開かれた。

参考人の一人,ビリントンLC館長は,図書館はいま“必要とされているのに極めて貧困”であり,「壁のない,資源を共有する図書館を実現するには,資源を増やすことはもちろんだが,我々が情報と知識に如何に依存しているかを,世界中が認識することこそ重要である」と述べた。また「政府情報国際交換のためのアメリカ側窓口として,LCは海外の1万5千機関から年間50万点に及ぶ資料を受け取っている。これらの資料は,議会,政府,学者にとって非常に貴重なものであり,今後はさらに科学技術など入手困難な資料の収集に力を入れるべきである」と述べた。さらに「国際ネットワーキングの重要性は増す一方だが,今後は国内の拠点である情報センターにも目を向けるべきである。アメリカが競争力溢れる国であるためには,学校教育での地域研究及び外国語教育が重要であり,世界の情報ネットワークは,将来のアメリカの指導者が,語学に堪能であって始めて駆使できる」と語った。さらにLCは米国内では「質問者と地域あるいは州の図書館を結ぶ交換台であるとともに,最後の拠り所としての役割に力を尽くす」と述べた。

また他の参考人ニューヨーク州教育長官トーマス・ソボル及びロバート・ウェッジワース・コロンビア大学図書館学校長は,資格を有する図書館員が足りなくなっている深刻な事態を述べ,議会に“国家図書館部隊(National Library Corps)”の創設を訴えた。部隊は,就業前採用,奨学資金,授業料の優遇措置,図書館学修士課程の充実等を通して新しい図書館員世代を養成しようとするものである。

さらにニューヨーク公共図書館長ティモシー・ヒーリーは「図書館員は民主的機関の守り手のみならず,世界中に民主主義の夢,理想,希望を運ぶ重要な担い手である。偏狭な宗教的悪意や人種差別を癒すものこそ知識であり,我々図書館員が毎日提供しているものが知識である」と語った。

千代由利(ちよゆり)

Ref: American Libraries 22 (7) 609, 1991
Advanced Technology Libraries 20 (8) 1, 1991. 8; 20 (9) 1, 9-11, 1991. 9
LC Information Bulletin 50 (16) 303-304, 1991. 8. 12
Library Journal 116 (13) 14-15, 42-46, 1991. 8
Public Law 100-382 1988. 8. 8
WHCLIS関係記事 CA017,CA040,CA118,CA405,CA581