CA1169 – 変わる公共図書館の予算配分−増加するインターネット費用− / 長嶋佐央里

カレントアウェアネス
No.221 1998.01.20


CA1169

変わる公共図書館の予算配分
−増加するインターネット費用−

アメリカ政府は,2000年を目標に全国民が12歳までにインターネットを利用できるようにする構想を実施するため,インターネット教育の整備を行い,学校や図書館にインターネットの普及を促進している。こうしたなかで,アメリカの公共図書館ではインターネット接続費等の情報通信技術に関連する費用が増加している。

Library Journal(LJ)誌が国内の公共図書館352館からえた回答を調査分析してまとめた「1997年版公共図書館予算レポート」をみると,公共図書館の支出のうち,技術関連費は2,3年前から急増しはじめ,過去2年間で2倍近くになっている。予算に占める技術関連費も次第に増加しており,95年度の5.7%が,96年度には6.8%となった。そのため,回答した約半数の公共図書館は他の支出を削減して技術関連費に充てており,その多くは資料購入費を削減している。なお,インターネット接続費は1館当たり平均で年間10万213ドルである。

このような不足する資金を補うため,公共図書館は追加資金を連邦,州,地方政府からの税金や補助金,起債,各種団体からの援助,各地の図書館利用者や地域住民が図書館活動の支援の一環として行っている寄付金募金活動などから調達している。この追加資金の用途は,技術関連費がもっとも多く,ついで資料購入費,特別費(研修費,改修費)である。

技術関連費や特にインターネット接続費に関して,喜ばしい話もある。まず,公共図書館の財政が比較的健全であることである。先のレポートによると,96年度の予算の伸び率(前年度比)は,予算全体で6.4%,資料購入費は7.1%,人件費は6.3%であり,これはいずれも昨年とほぼ同様である。また,米連邦通信委員会(FCC)はインターネットの普及のため,通信業者から資金を徴収して基金を設立し,実質年間22億5,000万ドルにものぼると推定されるインターネット利用料金の割引(割引率20〜90%)を実施することになった。これにより,インターネット接続費は大幅に削減されると考えられる。さらに,図書館サービス及び技術法(LSTA)の成立により,連邦政府から図書館への予算配分のしかたが変更されたので,今後の図書館の財源確保はかなり見通しが明るくなったといえる。

このように連邦レベルでの支援態勢は充実してきているが,公共図書館の主要財源は地方政府からの配分であり,地域によって状況が異なっている。サウス・ダコタ州のあるカウンティの公共図書館では,97年度の技術関連費は前年度の2倍になると見込んでいる。しかし予算の権限をもつカウンティの委員会が図書館の技術関連費の必要性を認めないため,追加資金を得ることが困難であるという。一方,州政府と地方政府が公共図書館に対し積極的に支援を行っている地域では,財源の見通しは明るい。オハイオ州では州政府と地方政府の支援をうけ,オハイオ公共図書館情報ネットワーク(OPLIN)が1995年に発足した。OPLINは,オハイオ州にある250の全公共図書館を長距離デジタル回線で結び,またさまざまな商用データベースを提供している。

デジタル時代を迎え,公共図書館は特にインターネットに接続して,さまざまな情報,知識,サービスを提供しはじめたことにより,技術関連費の増大に苦しめられるようになってきた。公共図書館が地域情報ネットワークの拠点としての役割を担うためには,インターネットを利用して図書館間のネットワークを構築し,図書館外部の情報資源に対するリンクを行い,アクセス可能な情報を拡大することによって,利用者の情報要求を満たしていく必要がある。このため,今後も技術関連費は間違いなく上昇していくであろう。公共図書館は,予算配分や資金調達に対して革新的な政策をとらなければならない状況にある。

長嶋 佐央里(ながしまさおり)

Ref: Public library budgets brace for Internet costs. Libr J 122 (1) 44-47, 1997
Public libraries face fiscal challenges. Libr J 121 (1) 40-45, 1996