CA1170 - コンピュータをすべての人に−汎用ユーザ・インタフェースの試み− / 石橋隆宏

カレントアウェアネス
No.221 1998.01.20


CA1170

コンピュータをすべての人に
−汎用ユーザ・インタフェースの試み−

コンピュータの普及と増加に伴い,ユーザは数が増えるだけでなく質的にも多様化する。誰もがコンピュータを使う時代には,老人や子供,障害者といったユーザが使用することも考慮しなければならない。また,使用目的・使用条件も多種多様になり,平均的なユーザの使用環境を想定するだけでは不足するケースも多くなる。

1997年4月7日から11日にかけて,シリコンバレーにおいて第6回WWWカンファレンスが開催された。この会議のプログラムの一つである“Web Access97(http://access.www6conf.org/)”においては,“Everyone, Everything, Connected”というキーワードのもとに,主に,障害者のインターネットへの情報アクセスが討議された。こうしたテーマが議論の対象となる背景には,コンピュータのユーザ層の多様化がある。

コンピュータのユーザ・インタフェースは情報アクセスの利便性を大きく左右する要因である。ユーザが目的の情報をいかに効率よく引き出せるかはデータとユーザの間に介在するユーザ・インタフェースによって決まると言っても良い。

日本におけるインタフェースデザインの研究として興味深いものに,「トロン電子機器HMI研究会(http://tron.um.u-tokyo.ac.jp/TRON/proj95/HMI.html)」の活動がある。これは東京大学理学部の坂村研究室が進めている「TRONプロジェクト」のサブプロジェクトであり,前述のURLで研究成果を概括している。このプロジェクトでは,(1)操作作法の統一,(2)障害者への配慮,(3)国際性への対応,(4)安全性への配慮を重視している。プロジェクトでは,これらを実現する操作方法や操作環境をトロン作法と呼び,これに準拠した仕様を策定している。

先に紹介したWeb Access97のスポンサーであるウィスコンシン大学のTrace Research and Development Centerでは,あらゆる人に使用可能なコンピュータのデザインを,UNIVERSAL DESIGNと呼び,そのガイドラインをまとめている。(http://www.trace.wisc.edu/text/univdesn/ud_princ/ud_princ.html)。以下は,そこであげられているデザインの7原則である。

(1)どんなユーザでも等しく利用できる。

例: プライバシー保護,セキュリティなどの機能を等しく提供する。

(2)使用法が柔軟である。

例: 利用者の利き腕がどちらでも,利用できる。

(3)シンプルで,直感的に理解しやすい。

例: 利用者の経験,知識,言語能力に依存しない。

(4)様々な方法で情報を得られる。

例: 視覚だけでなく,触覚や聴覚を用いても情報が得られるように,複数の入出力方式を用意する。

(5)利用者のミスに対して寛大である。

例: エラーに対する警告の表示。

(6)肉体的な負担がかからないこと。

例: 反復的な操作を最小限にする。

(7)利用者の体の大きさや状態に依存しない。

例: 利用者が座っていても立っていても,利用できるようにする。

広範囲のユーザを意識したインタフェースは,平均的なユーザに対しても,快適な利用環境をもたらす場合が多い。ユーザによっては,全く異なった環境を用意しなければならない場合はあるだろう。だが,データの汎用性,統一性といった観点からも,できるだけ多くのユーザに対応している方が望ましい。特に,ユーザ・インタフェースがGUI中心となり,複雑化している昨今の趨勢を考えると,統一感のあるユーザ・インタフェースはますます重要となる。

コンピュータはあくまで道具であり,ユーザが目的の情報にアクセスするための手段にすぎない。全ての人が,自分に適した方法で情報にアクセスできることが望ましい。あらゆるユーザに対応できる,汎用的なユーザ・インタフェースが求められているのである。

石橋 隆宏(いしばしたかひろ)

Ref: Jin, Zhang et al. The effect of human behavior on the design of an information retrieval system interface. Int Inf Libr Rev 28 (3) 249-269, 1996
関根千佳 Webのユニバーサル・デザインを考える Internet ASCII 2 (7) 314-315,1997
坂村健 これからのインターフェースデザイン TRONware (46) 22-27, 1997
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