カレントアウェアネス
No.205 1996.09.20
CA1083
台湾国立中央図書館が国家図書館に改称
台湾の国立中央図書館の大幅な組織改正が行われ同時にその名称も国家図書館と改称された。1996年1月31日総統令として公布された「国家図書館組織条例」によるものである。
それまでの「国立中央図書館組織条例」は,1940年に制定公布,1945年10月に改正されたもので,すでに改正後50有余年を経ていた。この間,国立中央図書館は1954年台湾において新規に開館した後,着実に図書館としての機能を充実させてきた。1986年9月には総面積4万m2,資料250万冊を収容,一日の利用者2000人を想定した新館が完成した。こうした規模の拡大と,特に機械化を中心とした業務の複雑化とともに,組織と人員配置のいずれもが業務の実態とは大きくかけ離れてしまうこととなった。このため行政院は,国立中央図書館のサービスの質の向上を図り,今後の業務の発展に対応した組織改正を行うために,1988年7月立法院に「国立中央図書館組織条例修正草案」を提出したのである。しかし,立法院の法制委員会と教育委員会の合同審査を通過したのが1991年12月。政治的係争案件ではなかったが(なかった故にか),本修正案は他の議案の影に埋もれてしまい審議は遅々として進まなかった。中央図書館が果たしている社会的役割,機能等について政党関係者の理解を得るため,ねばりづよい説明を続けた結果,ようやく新条例の公布となったのである。
審議の過程で現行の教育部所管から,行政院に直属した組織とするべきだとの意見も出されたが,教育部の巻き返しとともに,行政院内においても図書館は学術研究組織と一体化してこそその機能が十全に果たせること,図書館業務は専門的・技術的なものであり,政策決定に係わるものではなく行政院に直属することは必ずしも適当ではないこと,また組織的にも行政院直属機関の肥大化を招く恐れがある等々を理由に反対があり,結局は現行どおりとなった。
新組織条例による組織は9組,3室,1処,2中心から成る。即ち,館長,副館長の下に,採訪組(収集事務),編目組(整理事務),閲覧組,参考組,特蔵組,資訊組(機械化および情報サービス事務),輔導組(協力および研修等事務),研究組(将来計画および図書館法規等事務),総務組の9組,人事室,会計室,政風室の3室,出版品国際交換処,国際標準書号(ISBN)中心,書目資訊中心(書誌ネットワーク協力事務)が設けられている。今回の改正によっても納本図書館としての同館の基本機能は変わることはないが,新たに参考組,資訊組,輔導組,研究組の4組が設けられ,また2中心が正式に法的に整備されたことからわかるように,同館の今後の業務発展の方向性が組織上でもはっきりと示されている。
なお,教育部内には国内図書館のさらなる発展を期して「図書館法」制定の動きも出ているようである。また,郭為藩教育部長は個人的希望ではあるが,情報化,余暇活用,教養向上等多元的機能を有する大規模な国立図書館を今後十年以内に設置することを表明している。
富窪 高志(とみくぼたかし)
Ref:曽済群 国家図書館組織法的立法過程 国立中央図書館館訊18(1)1-5, 1996
中央日報 1996.1.10
国立中央図書館 国立中央図書館六十年大事記(初稿) 1993