E858 – これからの公文書管理のあり方は?(日本)

カレントアウェアネス-E

No.139 2008.11.19

 

 E858

これからの公文書管理のあり方は?(日本)

 

 2008年2月に内閣官房長官によって設置された「公文書管理の在り方に関する有識者会議」はこのほど,これまで開催された12回の会議での議論の成果を取りまとめ,最終報告『「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」~今,国家事業として取り組む~』として発表した。

 報告は「1. 基本認識」「2. 公文書管理の改革目標」「3. 制度設計にあたっての基本的な考え方」「4. 公文書管理のあるべき姿に向けて」「5. 公文書管理担当機関の在り方」「6. 公文書管理法制に盛り込むことを検討すべき事項について」の6セクションから成る。冒頭で,民主主義の根幹を支える基本的インフラ,国民の貴重な共有財産,国民の知的資源という3つの観点で公文書の意義を指摘し,その十全な管理・保存の必要性を確認するとともに,公文書の統一的な管理・保存が,国による適正かつ円滑な意思決定と,国による国民に対する説明責任といった観点から見ても必須であることを述べている。

 その上で,これまでの日本の公文書管理の状況を振り返り,公文書に係る法整備がこれまで,「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法,平成11年5月14日法律第42号)をはじめ,文書公開の面を中心に整えられてきたことなどを指摘している。本報告はこれまで手薄になっていた文書の管理・保存までも含みこんだ,作成から利用までのライフサイクルを通じた公文書管理法制を確立し,公文書の意義を損なうことのない管理システムを構築することの必要性を訴えている。そして,(1) 文書の所在を特定できる文書管理システムを構築し,「文書の追跡可能性(トレーサビリティ)」を確保すること,(2) 文書管理サイクル全体を通して適切な管理を行う体制を整備し,「政府の文書管理に対する信用(クレディビリティ)」を確保すること,(3) 国民に対して,利用機会の更なる充実,利便性の更なる向上を図り,「文書の利用可能性(アクセシビリティ)」を確保すること,という3つの改革目標を提示している。

 さらに,掲げた3つの改革目標を達成するためにはどのような制度設計が望ましいのかについて,具体的に検討を加えている。公文書の作成・整理・保存については例えば,各府省の各課室レベルでまちまちになっているルールを整理して共通化し,文書を統一的・体系的に管理できるようにすること,各府省から国立公文書館へ文書が確実に移管されるよう,移管・廃棄基準の明確化を図ること,文書管理に関する専門家(レコードマネージャー,アーキビスト等)を各府省で確保し,彼らからの支援を受けられるようにすること,ITを活用し,業務の効率化や国民の公文書へのアクセシビリティ向上を図ること,立法府,司法府からの文書の移管を進めること,といった検討結果を示している。また公文書管理担当機関について,日本全体の公文書管理に関する「司令塔」機能を果たすことが求められているとし,その役割を十分果たすためには,有識者からの意見を聞く委員会等を設けることや,内閣府,総務省,独立行政法人国立公文書館からなる現状の公文書管理体制を見直すといったことが必要であると指摘している。現状の体制の見直しとしては,公文書に関する事務の内閣府への一本化や,国立公文書館の特別法人への改組等を提案している。

 最後に,これまでの記述を踏まえ,公文書管理法制に盛り込むことを検討すべき事項を(1) 公文書管理法案(仮称)の目的について,(2) 公文書等の定義等について,(3) 行政文書の管理について,(4) 独立行政法人等の文書の管理について,(5) 歴史公文書等の管理について,(6) 公文書管理担当機関の機能強化等について,(7)その他についての7点にまとめている。

 2009年は情報公開法の制定から10年の節目に当たることもあり,これを機に公文書管理のあり方が抜本的に見直されようとしている。

Ref:
http://www.archives.go.jp/law/pdf/yushiki081104.pdf
http://www.archives.go.jp/news/081104_01.html
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koubun/index.html