カレントアウェアネス-E
No.115 2007.10.17
E705
日本,「障害者の権利に関する条約」に署名
日本政府は2007年9月28日,閣議決定を経て,「障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」に署名を行った。
同条約は,「すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し,保護し,及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進する」(第1条)ことを目的としており,2006年12月に第61回国際連合総会において採択されたものである。2007年10月1日時点で,日本を含む117か国が署名を行っている。
同条約では,「障害者がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするに当たっては,物理的,社会的,経済的及び文化的な環境,健康及び教育並びに情報及び通信についての機会が提供されることが重要である」(前文(v))として,個人の尊厳・自律・自立の尊重,差別の禁止,多様性の尊重,社会への完全・効果的な参加と受け入れ,機会の均等などとともに,施設及びサービスの利用を可能にすることにも力点が置かれている。とりわけ情報サービスの利用可能性の保障については,ユニバーサルデザインや障害者に適した新たな技術の研究・開発及び促進(第4条の1(f)(g)),情報,通信その他のサービスの利用可能性の確保と利用の促進(第9条の1,2),様々な種類の障害に相応した様式及び技術による,一般公衆向けの情報の,適時で追加費用を伴わない提供(第21条(a)),民間の団体やマスメディアに対する,障害者にとって利用可能な情報及びサービス(インターネットによるものを含む)の要請・奨励(第21条(c)(d))など,数多くの条項で触れられており,その重要性が強調されている。さらに図書館は,障害者のアクセスを確保するために条約締約国がすべての適当な措置をとる「文化的な公演又はサービスが行われる場所」(第30条の1(c))の例に挙げられている。
同条約に関してはこの後,国会による承認,関連する国内法規の整備等のプロセスに進むことになる。図書館界においても,このプロセスを注視しつつ,障害者について改めて考えることが求められよう。
Ref:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h19/9/1175621_812.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_32.html
http://www.un.org/disabilities/
http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=61