カレントアウェアネス-E
No.298 2016.02.18
E1765
専門図書館につながる:ディープ・ライブラリー
「ディープ・ライブラリー」(以下dlib.jp)は2015年11月にリリースされた。
dlib.jpとはいったいどういったものなのか。ひとことでいうと,「専門図書館とその所蔵資料への案内所」である。検索窓にキーワードを入力すると,参加館のOPACおよびホームページ内を検索して合致する書誌情報を抽出する,いわばディスカバリーサービスである。
専門図書館協議会のウェブサイトによると,一般に公開している専門図書館は限定公開も含めると全国で1,500館以上に上る。そもそも存在自体を知られていない専門図書館も多いと思われ,実際に利用している人はごく一部で,当然,各館の所蔵資料についても知られていないということになる。
しかし,dlib.jpを利用すれば簡単に専門情報の所在を知ることが可能になる。dlib.jpのめざすところは,ユーザーが,必要な情報を持っていると思える専門図書館にたどり着くことである。ではあるものの,このdlib.jpの入口が,専門図書館のホームページにあっても効果は見込めない。専門図書館そのものがあまり知られていないのであるから。そこでいくつかの公共図書館や大学図書館に対して,それぞれの図書館のホームページにdlib.jpへのリンクをはり,dlib.jpのバナーをおいてもらうという協力を要請した。これにより,各図書館の利用者が専門図書館の所蔵情報にも簡単にアクセスできることになる。また同時に,専門図書館をつなぐという効果も期待している。様々な主題資料を持つ専門図書館がつながっていけば,大規模な公共図書館や大学図書館に匹敵するものとなるのではないかと考えている。
dlib.jpはそもそもどのようにして生まれたのか。端緒は,2013年にBICライブラリが開始した,近隣の図書館との横断検索を実現しようという事業計画である。それまでBICライブラリは他館との連携を具体的な形でとったことはなかった。しかし図書館を取り巻く環境が大きく変化した昨今,「孤高」でありがちだった専門図書館も,連携が必要になると考え,横断検索を計画した。当初の横断検索の目的は2館の目録検索を同時に行い,該当する資料を探せるようにするものであった。そこで,BICライブラリの近隣であることや,比較的関連性の高いテーマの資料群を持っているのではないか,ということから市政専門図書館に横断検索の連携先となっていただくことをお願いした。そして,次に,システム構築を,横断検索システムの構築実績がある株式会社カーリルに依頼したのである。こうしてスタートした事業であったが,話を進めていくうちに,予想もしなかった方向に展開していった。
カーリル代表の吉本龍司氏からは,「専門図書館ってディープな資料を持っていますよね。でも,一般の利用者はそれをなかなか知ることができない。」との指摘があり「一般利用者がディープな専門図書館にたどりつくためのシステムにしてはどうでしょうか。」という提案があった。その時まで,当館では,5館程度の限られた図書館での横断検索のイメージしか持っていなかったが,吉本氏の提案により,個別の専門図書館同士をつなぎ,さらに専門図書館と各地の公共図書館や大学図書館とも結びつけるdlib.jpへと計画を発展させたのである。
こうして,市政専門図書館の田村靖広氏,ライブラリアドバイザーの高野一枝氏,カーリルの吉本氏と藤田方江氏,筆者の5名がdlib.jpを具体的に進めていくための委員会を結成した。委員会発足時の参加館は市政専門図書館とBICライブラリの2館のみであり,dlib.jpはまず参加館を増やすことを目標とした。そしてその一方で,ホームページへのリンクの掲載に協力してもらえる図書館の開拓もスタートした。これらの図書館にはdlib.jpへの入口として重要な役割を果たしてもらうことになる。2015年秋に開催される図書館総合展にdlib.jpとして出展することとし,それまでに参加館とリンク協力館の拡充に努めた。その結果,11月にはアジア経済研究所図書館,海事図書館,国際交流基金ライブラリー,国立女性会館女性教育情報センター,建設産業図書館が参加館に加わった。いずれも公開している専門図書館であり,多様なコレクションを持っている。さらに図書館総合展後には,国際協力機構図書館が加わり,現在の参加館数は8館となった。
dlib.jpは現在もシステムの修正と進化をさせつつ,少しでも多くの図書館とつながるべく参加館,リンク先の拡大に努めている。これから1年の間に参加館を100館にすこしでも近づけ,やがては専門図書館協議会加盟の公開図書館のほとんどがdlib.jpの参加館となることを目標としたい。また,図書館総合展のフォーラムにおいて専門図書館協議会事務局長鈴木氏が,「各専門図書館が今後より多くdlib.jpに参加するならNDLと同様の,様々な分野を包含するネットワーク上の“図書館”となるであろう。」と解説されたことをdlib.jpへのエールとして受け止めたい。
一般財団法人機械振興協会経済研究所BICライブラリ・結城智里
Ref:
https://dlib.jp/
http://blog.dlib.jp/entry/2016/01/20/140342
http://www.jsla.or.jp/area_conference/kanto_tiku/archive_faq/
http://www.jspmi.or.jp/biclibrary/index.html
https://www.timr.or.jp/library/