カレントアウェアネス-E
No.261 2014.06.19
E1577
図書館ウェブサイトのデザイン及びユーザビリティ調査(米国)
米国図書館協会(ALA)のレファレンス・利用者サービス協会(RUSA)が刊行している『Reference & User Services Quarterly』誌の2014年春号に,“The Website Design and Usability of US Academic and Public Libraries”と題する論文が掲載された。この論文は,米国の1,469館の大学図書館と公共図書館のウェブサイトにおけるデザイン,レイアウト,内容,サイト運営及びユーザビリティについて調査を行い,報告したものである。
調査は,ランダムに選んだ203の大学・公共図書館に対して行われたウェブサイト評価と,米国の9,000の大学・公共図書館に対して行われたオンライン調査(有効回答数1,266件)の結果に基づいている。ウェブサイト評価には,5つのセクションにわけられた67項目を10段階で評価するLibrary Website Usability Checklistが用いられ,オンライン調査の質問は,この項目を改正した44項目により構成されたものである。
ウェブサイト評価とオンライン調査に先立ち包括的な文献調査を行ったところ,現在の大学・公共図書館のウェブサイトのデザイン及びユーザビリティについての大規模調査は見当たらず,また,“デザインのガイドラインに従っているのか”,“誰がデザインし,管理しているのか”といった問いは既存文献では答えが見当たらなかったとしている。論文では,既存文献では明らかになっていない5つの調査課題(RQ)についての結果が示されている。
- 標準のデザイン,レイアウト(RQ1)
主要な要素の配置場所については,まず,メインナビゲーションはページの中央上部にある(38.4%)か,左端に縦に配置されている(36.3%)ことが多い。検索機能はページの右上にあることが多い(30.0%)が,37.8%は設置していなかった。図書館のロゴはページ上部の中央か左端に配置されている(それぞれ45.4%,43.3%)。問い合わせ先の配置場所は多様であり,ページ下部中央(21.6%)が多いが,まったく存在しないケースも16.2%ある。また,大学図書館,公共図書館のウェブサイトはともに,論理的,階層的に組織され,テキストと背景色のコントラストやフォントスタイル等も,読みやすさを考慮されたものとなっている。
- 一般的なコンテンツ(RQ2)
多くの図書館のウェブサイトには,問い合わせ先やアクセス方法,開館時間,OPAC等が掲載されている。他によく見られるコンテンツは,図書館規則,資料の貸出・予約・更新方法,子ども・若者向けサービス,電子資料の利用方法等である。これらは基本要素となっていることが確認できる。一方,掲載している図書館が8割を下回っているコンテンツについても,表で結果が示されている。それによると主要な職員の情報の掲載は74%,ウェブサイト内検索機能の提供は60%,ウェブサイトの作成日の掲載は52%,ブログやイベント情報更新のRSSフィードの配信は45%,最終更新日の掲載は27%などとなっている。
- デザイン,管理の担い手(RQ3)
調査対象となった図書館では,図書館員が通常業務の一部としてウェブサイトの管理を行っていることが最も多く,その割合は5割であった。また,デザインについては,図書館員が担っているケースが33.0%であり,外部委託先の会社が21.2%となっている。54.3%の図書館ウェブサイトにおいて,最近デザイン変更されていることから,参加館の半分以上のサイトでは,改善と改良が続けられていることが推測されるとしている。
- 推奨されるデザインガイドラインの順守状況とユーザビリティ(RQ4,5)
この論文で評価対象とされた図書館のホームページのレイアウトは,文献調査で取り上げられた複数の文献で提案されているデザインガイドラインを順守するものであった。ホームページから9つの質問に答えられるかによりユーザビリティを評価する調査では,圧倒的に多くのホームページが適切なものとなっていることが確認されている。しかし,ウェブサイトのユーザビリティに関するテストを行っていると回答した図書館は3割にすぎなかった。論文は,このことがウェブサイトのユーザビリティに利用者の視点が考慮されていないことを示していると述べている。
この論文は,大学・公共図書館のウェブサイトを大規模に調査し,現況を確認したものとして興味深いものとなっている。
関西館図書館協力課・安原通代