E1102 – 財政難の状況下での公共図書館における有料サービス(米国)

カレントアウェアネス-E

No.180 2010.10.07

 

 E1102

政難の状況下での公共図書館における有料サービス(米国)

 

 Library Journal誌の2010年9月15日号に,米国の公共図書館における有料サービスや収入獲得策の実施状況等に関する,同誌の調査に基づく記事が掲載された。その概要を紹介する。

 有料サービスや収入獲得策が意識される背景にあるのは財政難で,調査に回答した408館のうち,およそ4分の1は地元自治体からの圧力を感じており,60%近くは収入獲得策を予算カットへの対応策として捉えていた。

 収入獲得策として最もポピュラーなのは古本の販売で,88%の図書館が実施している。また,人口50万人以上の大都市圏の図書館では,3分の1がギフトショップを,4分の1がカフェを開設していた。その他の取組みとしては,オンライン書店との提携や会議室のレンタル等を行っているところもある。

 こうした取組みによる収入額は概してあまり大きくなく,財政支援という点での効果は小さいようであるが,例えばカフェが図書館の雰囲気を良くしたり,ギフトショップのグッズが宣伝媒体となったりという,金銭面以外のプラスの効果があることが記事では指摘されている。図書館で結婚式を行うことで図書館に縁のなかった人に来てもらったり,古い写真のデジタル化サービスでお年寄りと馴染みになったり,という例もあげられ,こうした取組みは図書館の味方を増やすことにつながる,との利点も示されている。

 一方,資料の貸出に関しては,約3分の1の図書館で,返却遅延罰金以外の課金を行っている。対象は,図書館間相互貸借による貸出や,娯楽目的のDVD・テレビゲーム・ベストセラー等の貸出である。また,利用者行動に影響を与えることを目的とした課金の例として,予約した資料を取りに来なかった場合に50セントの課金を行うことで,受け取られない取り置きが減少し,資料の有効利用と作業負担軽減につながったという事例が紹介されている。

 しかし,課金により予約が減るということは図書館の利用が減るということでもあり,それは,図書館の価値を損なうことにもなりかねない,と記事は指摘している。たとえ名目的な金額であっても,最も図書館を必要としている人を利用から遠ざけてしまうことになるのではないかという,図書館員の見解も示されている。

 コロンビア特別区公共図書館のクーパー(Ginnie Cooper)氏は,貴重な時間と労力をわずかな収入を得るために用いるのは非生産的ではないかと指摘したうえで,収入が増やせないのであれば費用を減らすのが次善の策だとし,財政難は,コミュニティにとって本当に必要な図書館サービスとは何かを真摯に見つめ直す機会でもあるという見解を示している。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/lj/home/886465-264/survey_on_fees_for_library.html.csp