2021年1月26日付で、生命医学分野のオープンアクセス（OA）出版社BioMed Central（BMC）が刊行する“Systematic Review”誌に、論文“PRISMA-S: an extension to the PRISMA Statement for Reporting Literature Searches in Systematic Reviews”が掲載されています。
エビデンスに基づく医療（EBM）の実践で重要性の高い研究デザインであるシステマティックレビューやメタアナリシスでは、2009年に国際研究グループが27のチェックリストと4のフローチャートで構成する「PRISMA声明（Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses Statement）」を発表し、研究の品質を向上させるためのガイドラインとして機能しています。文献検索手順の記録はこうした研究の重要な構成要素であり、検索の堅牢性と再現性を確保するために同声明でもチェックリストの3項目で言及されている一方、最適な検索方法に関する詳細な指針が確立されていないことなどから、実際の研究における準拠率は低い状況にあります。“PRISMA for Searching（PRISMA-S）”はこうした課題へ対応するため、同声明を文献検索分野に拡張した指針として2021年に公開されました。同論文は、指針の作成グループらが検討の背景や作成の過程、指針の内容、準拠事例などを解説する内容です。
“PRISMA-S”は、3段階のデルファイ法による調査、コンセンサス会議、パブリックレビューを経て作成されました。文献検索手順を記録するための指針として、検索対象としたデータベース名・臨床試験登録レジストリ・オンライン情報源等に関わる「情報源・方法」、検索式・制約や限界・検索フィルター・先行研究の手法の活用状況・検索の実施日等に関わる「検索手段」、検索プロセスの「ピアレビュー」、検索結果の合計レコード数・複数の情報源を用いた場合の重複処理に関わる「検索結果の管理」の4セクション・16項目のチェックリストで構成されています。
“PRISMA-S”の全文は、非営利団体Center for Open Science（COS）の研究プロジェクト管理システム“Open Science Framework”（OSF）のプラットフォーム上で公開されています。
Rethlefsen, M. L., et al. PRISMA-S: an extension to the PRISMA Statement for Reporting Literature Searches in Systematic Reviews. Systematic Review. 2021, 10(1):39.
https://doi.org/10.1186/s13643-020-01542-z
PRISMA for Searching（PRISMA）
http://www.prisma-statement.org/Extensions/Searching
PRISMA-S: PRISMA Search Reporting Extension（OSF）
https://doi.org/10.17605/OSF.IO/YGN9W
関連：
PRISMA Statement（PRISMA）
http://www.prisma-statement.org/PRISMAStatement/PRISMAStatement
卓興鋼, 吉田佳督, 大森豊緑. エビデンスに基づく医療（EBM）の実践ガイドライン システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目（PRISMA声明）. 情報管理. 2011, 54(5), p. 254-266.
https://doi.org/10.1241/johokanri.54.254
参考：
E1508 – 図書館員の役割はどう変化してきたか：健康科学分野を例に
カレントアウェアネス-E No.249 2013.11.21
https://current.ndl.go.jp/e1508
CA1563 – 研究文献レビュー：日本における情報検索技術に関する研究動向 / 岸田和明
カレントアウェアネス No.284 2005.06.20
https://current.ndl.go.jp/ca1563
CA1659 – 研究文献レビュー：今日の医学図書館 / 城山泰彦
カレントアウェアネス No.295 2008年3月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1659
