障害のある学生12人へのインタビューに基づく米国の大学図書館ウェブサイトのアクセシビリティに関する課題と推奨事項(文献紹介)

2020年7月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.81, no.5に、米・イリノイ大学シカゴ校のヘルスサイエンス図書館でリエゾン・ライブラリアンを務めるブランスキル(Amelia Brunskill)氏による論文““Without That Detail, I’m Not Coming”: The Perspectives of Students with Disabilities on Accessibility Information Provided on Academic Library Websites”が掲載されています。

同氏は、米国の多くの大学図書館のウェブサイトには、障害のある利用者向けに情報提供するページがありますが、これらのページに対する利用者のニーズや使い勝手、期待等を調査した研究がほとんど存在しないことを背景に、同校に在籍する障害をもつ学生12人に対してインタビュー調査を実施しました。インタビューでは学生に対して、大学図書館の障害者向けウェブサイトにおける、導線や使用される文言、ウェブサイトのデザイン全体、ページの構成、提供されるコンテンツ等の印象についての質問が行われています。

論文ではインタビュー結果に基づいて、図書館ウェブサイトのメインとなるページからの誘導が不十分と感じている意見が多かったこと、これまでの研究では言及の少なかった音響・照明といった図書館の物理的な設備に関する情報の不足が指摘されたこと、こうしたページについて図書館以外の場所で広報するアウトリーチが求められていることなど、大学図書館ウェブサイトの障害者向けページのアクセシビリティや包摂性に関わる多くの重視すべき考慮事項等を指摘しています。また、こうしたページを新たに作成したり、既存のページの見直しを行う大学図書館に対して、図書館設備に関する情報を提供すること、障害をもつ利用者に対応可能な個人・部署等の連絡先を記載すること、コレクション内でアクセシビリティに関わる機能を備えたコンテンツを強調することなどの推奨事項のリストを提示しています。

Brunskill, Amelia. “Without That Detail, I’m Not Coming”: The Perspectives of Students with Disabilities on Accessibility Information Provided on Academic Library Websites. College & Research Libraries, 81(5), 2020, p. 768-788.
https://doi.org/10.5860/crl.81.5.768

参考:
北米研究図書館協会(ARL)が報告書シリーズ“SPEC Kit”第358号を公開:アクセシビリティ・ユニバーサルデザインがテーマ
Posted 2018年5月7日
https://current.ndl.go.jp/node/35947

【イベント】千葉大学アカデミック・リンク/ALPSセミナー「障がいのある学生への学修支援のあり方を考える」(1/10・千葉)
Posted 2019年12月17日
https://current.ndl.go.jp/node/39762

E1136 – 北米の大学図書館における障害者サービスの調査結果
カレントアウェアネス-E No.186 2011.01.20
https://current.ndl.go.jp/e1136