Knowledge Exchangeが、変化するプレプリントの役割について、文献調査と研究者へのインタビュー調査に基づいて検討したレポート”Accelerating scholarly communication – The transformative role of preprints”を公開しました。
同調査では2010年代以降、多くの分野に広がったプレプリントの動きをプレプリントの「第二の波」と捉え、現状を調査するとともに今後ありうるシナリオを検討しています。同レポートによれば、研究者にとってプレプリントを活用する動機は早期・短期間で研究成果が流通できる点、活用の障害は査読がないことと雑誌に論文掲載を断られることへの恐れであるとされています。また、プレプリントの情報収集・自身の情報拡散のいずれにも、Twitterが重要な役割を果たしていることが指摘されています。また、多くのプレプリントサービスが登場したものの、雑誌等の出版プラットフォームへの統合が進んでいないことや、情報の重複・情報保存への懸念等が現在の問題点として指摘されています。
同レポートではプレプリント・プレプリントサーバが短期間で急速に拡大したことを鑑みると、新技術に関するハイプ・サイクル(誇大宣伝サイクル)理論に基づき、今後ふくらみきった期待のピークを過ぎる時期が訪れ、サービスは統合・淘汰されるだろうとしています。その後のありうるシナリオとしては、「1. 潮目が変わり、もともと使われていたarXivやRePEcのみが残る」、「2. いくつかの分野では新たにプレプリントが地位を獲得する」、「3. ほとんどの分野でプレプリントが受け入れられる」が考えられ、短・中期的には2のシナリオになると想定されるものの、長期的には1か3に収束していくと予測しています。シナリオ3はすべてのステークホルダーがプレプリント実現のために協力し合った場合のみに実現すると考えられ、実現するとしても長い時間がかかるだろうとされています。
Accelerating scholarly communication – The transformative role of preprints(Knowledge Exchange、2019/9/24付け)
http://www.knowledge-exchange.info/event/preprints