英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)、デジタル研究と研究図書館の役割に関する報告書“Digital scholarship and the role of the research library”を公開

2019年7月1日、英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)が、報告書“Digital scholarship and the role of the research library”を公開しました。

この報告書は2019年1月から4月にかけて、RLUKが加盟館に行ったDigital scholarship(デジタル研究)に関する調査で得られた知見を示したものです。

・Digital scholarship(デジタル研究)という用語は、運用上の定義が加盟館の中でも多様であり、この用語を使用していない館もあるなど、指し示す内容が不安定な用語であること
・図書館はメタデータ作成・コレクションのキュレーション・デジタル化・デジタル保存などのサービスを活発に提供する一方、コンテンツのエンコーディング、視覚化、統計的分析などより複雑な専門技術を要するものについてはあまりサービス提供できていない傾向にあること
・北米やアイルランドといった他国と比較して、RLUKの加盟館はデジタル研究の主要サービス提供者であるよりも、研究者と機関内の他部署との間に立ってこれらをつなぐ「仲介者」として重要な役割を果たしていること
・図書館は研究者の開始したデジタル研究プロジェクトのサービス提供者・研究協力者という位置づけで役割を果たすことが多く、これにより、資金が特定プロジェクト専用で時限的になるため、サービスの持続性やスキルの維持に課題があること
・多くの図書館がサービス提供者としての役割から、研究協力者・新しい研究プロセスやプラットフォームの開発者としての役割へ移行しつつあり、デジタル研究のための空間、チーム、リソースの創出を通してこれを推し進めようとしていること
・少数の図書館では館内にデジタル研究専門部署を設けることで、図書館が研究協力者としての役割を果たすことを後押ししている事例もあるが、多くの図書館では図書館全体で分散してデジタル研究への支援を行っていること
・プロジェクト資金への依存と競争の激しい雇用市場で高度な技術を持つ専門家を加入させることの難しさからデジタル研究サービスの持続性に課題を抱えており、一部の図書館では大学院生のアシスタントが技術的に複雑な内容のサービスを行っている例があること
・現在のコレクションの中心はアナログ資料をデジタル化したコンテンツであるが、ボーンデジタルの資料の増加が予想されこれに備える必要があると図書館が認識していること
などが指摘されています。

RLUKは11月にバーミンガムで開催される文化遺産に関する分野横断合同会議DCDC19のデジタル研究をテーマとするパネルで、この報告書について討論する予定です。

Digital scholarship and the role of the research library – an RLUK report(RLUK,2019/7/1)
https://www.rluk.ac.uk/digital-scholarship-and-the-role-of-the-research-library-an-rluk-report/

Digital scholarship and the role of the research library [PDF:78ページ]
https://www.rluk.ac.uk/wp-content/uploads/2019/07/RLUK-Digital-Scholarship-report-July-2019.pdf

参考:
英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)、特別コレクションのインパクト評価に関する報告書“Evidencing the Impact and Value of Special Collections”を公開
Posted 2019年3月12日
http://current.ndl.go.jp/node/37759

英・Jisc、文化遺産に関する分野横断合同会議“Discovering Collections, Discovering Communities(DCDC)”の主催メンバーに加わる
Posted 2019年7月8日
http://current.ndl.go.jp/node/38522