CA738 – 児童サービスの全国調査(米国) / 佐藤尚子

カレントアウェアネス
No.141 1991.05.20


CA738

児童サービスの全国調査(米国)

全米教育統計センター(NCES)は,1989年3/4月,公共図書館における児童サービスに関して,初の全国調査を行った。

調査は,全米の846の図書館に調査票を郵送して行われた。中央館,分館などさまざまな図書館が対象とされているが,図書館システムよりむしろ個々の図書館の調査の方にポイントが置かれている。回収率は97%。調査結果の概要は以下の通りである。

  1. 1988年秋の公共図書館利用者のうち,37%は14歳以下の児童である。
  2. 児童が外国語の資料を利用したり,図書館間貸出しを受けたり,音楽資料を利用したりすることは,多くの図書館で行われている。大人向けの本や,パソコン,コンピュータソフトの利用はやや制限されている。
  3. 夏季読書プログラム,お話の時間,読書相談は非常に良く利用されているが,推薦図書一覧,学習室コーナーはあまり利用されていない。
  4. 図書館は,3〜5歳児を対象に最も多く催しを行っている。その次に多い対象は学童である。
  5. 公共図書館と学校とは密接な協力関係にあり,図書館員が学校に出向いてブックトークをしたり,教室ぐるみで図書館ツアーを行ったりしている。幼稚園や保育所とも協力関係にある。
  6. 67%の公共図書館は,地域や広域の図書館システムあるいは州図書館行政機関の児童専門家等からの協力を得ている。
  7. 児童図書館員を置いていない図書館は58%あり,二人以上置いているのは8%に過ぎない。
  8. 児童図書館員は,週千人以上の利用がある公共図書館の本館に置かれていることが多い。
  9. 公共図書館員の1/3はMLS(図書館学修士)を持っているが,児童図書館員については1/2がMLSの保持者である。

なお,調査対象図書館の1週間の利用者数は7〜34,315人で,平均1,007人。週の開館時間は2〜84時間で,平均39時間。全貸出数に占める児童書の割合は平均43%であった。また全資料購入費に占める児童書の割合は平均35%で,児童書の貸出冊数の多い図書館ほど購入費に占める割合が高かった。

14歳以下の児童が全人口に占める割合は22%であるのに対し,図書館利用者全体に占める割合は37%に達する。このように児童は図書館にとって“上得意”であり,かつ次世代の成人利用者の予備軍として大切な存在である。今後全米における児童図書館サービスの諸計画策定の際,この調査結果は基礎データとして利用されるであろう。日本における児童図書館サービスの現状と重ね合わせてみても,興味深い結果が出るのではないだろうか。

佐藤尚子(さとうなおこ)

Ref: Immroth, Barbara Frolling.How is the next generation of library users being raised ? The first national survey on services and resources for children in public libraries. Public Libraries 29 (6) 339-341, 1990. 11/12
U. S. Department of Education. Services and resources for children in public libraries, 1988-89, (NCES survey report. Data series: FRSS-36) Washington, D.C., GPO, 1990.