CA659 – ホームレスも住民―ニューヨーク公共図書館のサービス / 坂本博

カレントアウェアネス
No.128 1990.04.20


CA659

ホームレスも住民−ニューヨーク公共図書館のサービス

全米には公式統計で2百万,推計で4百万人のホームレスの人がいるが,ニューヨーク公共図書館は,「公共図書館の使命はサービス地域内のすべての人々に奉仕すること」として,ニューヨーク市の福祉ホテルにいる3千5百家族のホームレスに対してサービスを行なっている。

最も確固としたサービスを行なっているMartiniqueホテルの例を紹介する。同ホテルの部屋代は,家族4人で月に1600ドル,これを国が半分,州と市が1/4づつ負担している。1986年夏より,毎週金曜日の午前10時半に2人の児童図書館員による訪問サービスが始められた。これにアウトリーチの専門職が同行し,場所の設営,チラシやポスターによる案内から,一部屋づつドアをノックして勧誘することを担当した。多くの親はこれを歓迎し,子供たちに一張羅を着せて参加させた。

ホテルでのサービスは図書と人形を使って「絵本の時間」を行い,終りに子供達にホテルに委託してある文庫から2冊を貸し,次回に別の本と取りかえる形で行った。夏期の終りに,親子に面談して得たこの計画の評価は好評であった。後に人員不足から週一回のサービスが月一回になったが,1987年秋には週一回に復活し今日に至っている。人形芝居を行なったときには,セサミストリートで有名なジム・ヘンソン氏が多くの人形を寄贈してくれたので,参加した子供にひとつづつ配ることができた。

坂本 博

Ref. Bookmark 46 (4) 229-232, 1988.