カレントアウェアネス
No.121 1989.09.20
CA620
最近の北京図書館
北京図書館(中国国家図書館)の蔵書数は世界第5位,アジアでは第1位を誇る。北京図書館は,昨年延べ153万人の利用者を受け入れた。新館落成前の1986年と比較すると,約2倍に増加している。利用された文献は延べ337万冊である。分館も含めると全館で30の閲覧室があり,昨年は3万5593人が貸出証と閲覧証の手続きを行った。
数年前までは,文学,芸術の分野の利用が多かったが,最近では外国語,コンピューター,法律,心理学,体育の分野に人気がある。人々の関心は,実用的で,すぐ役に立つものの方へと向かっている。
閲覧室で読書をしているのは,大多数が学生と科学技術関係者である。座席が空くのを待って並んでいた大学生は,最近の青少年の勉強離れについて,次のように語った。「不公平な雇用制度のためだと思います。雇用にあたって,知識が少しも重視されない傾向があります。外国で博士号を取ったのに,就職できない人もいます。勉強しても何にもならないと思われても仕方がありません。しかし,私は勉強は必要だと思います。社会に弊害があるからといって,自らを損なうべきではありません。」
天津から資料を調べに来ている大学院生は語る。「ここに来て3日目です。三峡プロジェクトの投資政策に関する論文の準備をしています。私のように経営を学ぶ者にとっては,実情に触れることが特に重要です。しかし,大学が学生に提供する実践の機会は非常に少なく,多くの知識は古くなっており,学生は興味を失っています。十数年も勉強して,いざ実践となると頭がカラッポということになります。このような問題は,本来大学が解決すべきですが,今のところ我々学生が教育上の欠点を自ら補わなければなりません。そうしないと,犠牲になるだけです。」
鎌田文彦
Ref. 人民日報 1989.5.16.