CA1551 – 「2004年ダブリンコア・メタデータ応用国際会議」(DC-2004)開催される / 坂本博

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カレントアウェアネス
No.283 2005.03.20

 

CA1551

 

「2004年ダブリンコア・メタデータ応用国際会議」(DC-2004)開催される

 

 平成16年10月11日から14日まで上海図書館において開かれた標記会議に出席したので報告する。

 この会議は上海図書館が主催し,中国科学院文献情報センター,中国国家科技図書文献センター,ダブリンコア・メタデータ・イニシアティブ(Dublin Core Metadata Initiative: DCMI)の他,上海の二大電子メーカーがスポンサーとなっている。

 中国から68人,海外から92人の合計21か国160人の参加者があった。会議は講演・報告,理事会,顧問会議,運営委員会,ワーキング・グループ会議,研修会(Tutorial)から構成されていた。同図書館では,一部並行して(12日〜15日)16か国から70余名を集めた第2回上海国際図書館フォーラム(Shanghai International Library Forum: SILF)が行われたため,13日午前の基調講演プログラム3件は両会議共通に行われた。この共通プログラムの基調講演をIFLA次期会長のバーン(Alex Byrne)氏に依頼してしまうのが上海図書館の凄いところである。同時に二つの国際会議を進める事務方の能力もあなどれない。

 日本で行われた2001年の同会議については中井の報告(1)を,日本から10数名の発表があったSILFについては『図書館界』の記事(2)を参照されたい。DC-2004の報告部分の会議録(3)は上海科学技術文献出版社から発行されている(200元:約2,500円)。報告とそれ以外の会議の内容はDCMIのホームページ(4)からのリンク(後述)でも見ることができる。ただしよくあることだが,提出したペーパーをなぞるように報告する人もいれば,ペーパーにこだわらずに報告を行う人もいる。行われなかった報告もある。また,DC研修会の資料も同ホームページで見ることができ(5),ダブリンコア入門の資料として大変便利である。v言うまでもなくダブリンコア(CA1506参照)は,1995年にOCLCがその所在地であるダブリン市で開催したワークショップ(研究会)から生まれたメタデータ記述要素セットである。その後7回にわたるワークショップ(1996〜2000年)を経てダブリンコアは進化(複雑化?)し,図書館に限らず様々な分野で用いられるようになった。もちろんダブリンコア以外にもメタデータ記述要素セットは開発されている。

 それまでのダブリンコアのためのワークショップを発展させ,図書館関係者にもダブリンコアにも限定せず,幅広くメタデータの開発・応用についての報告と意見交換の場として開催されたのがDC-2001(東京)であった。今回の参加者も図書館関係者は半分以下である。その他の参加者は企業,政府機関,アーカイブズ,大学,教育関係,コンピュータ関係,国際機関からであった。要するにインターネットを通じた情報提供に関心を持つ者のメタデータ国際会議である。そのせいか,図書館員の集まりなら当然の上海図書館見学コースというものは設定されていなかった。

 

会議の構成

 委員会等を含めれば9日から15日にわたった会議のプログラムとほとんどの内容は,ホームページで見ることができる(6)。内容は次のように分けることができる。

  • 国際会議としての基調講演・報告(plenary paper sessionとshort paper session)。
  • ダブリンコア・ワークショップとしての理事会(Board of Trustees),運営委員会(Usage Board),顧問会議(Advisory Board),および行政,コレクション記述,教育,企業,日付,基準,図書館,カーネル(Kernel)/ERC,アーキテクチャ,アクセス,国際化,保存,利用案内,レジストリの各ワーキング・グループの会議。
  • セマンティック・ウェブへの応用,提携・協力プログラム,IFLA関係,LOM(教育コンテンツ・メタデータ),NISOメタサーチ,LOMとダブリンコア,をテーマとした会議(special session)。

 これらがコンパクトに詰め込まれているため,総ての会議に出ることはできないが,全参加者への報告の時間が設けられていた会議もある。総てのワーキング・グループが何らかの結論を出したわけではないが,グループによってはDCMIのホームページで報告を見ることができる(7)。運営委員会の決定もDCMIのホームページで見ることができる(8)

 会期中連日の早朝の研修会と,10日のプレコンファランス・ワークショップ(世界規模企業間相互利用のためのメタデータ)は別会費の設定となっていた。後者には別のスポンサーもあり,そのスポンサーへの出席報告文書に署名をさせられた。13日午前の基調講演等は前述のようにSILFと共通に行われた。この部分は講演者と順番がプログラムとは異なっている。

 

報告の内容

 公式発表によれば,5件の基調講演,10件のplenary paper session報告,21件のshort paper session報告が行われた。

 

plenary paper session報告

 I.メタデータのフレームワーク,II.メタデータの利用者,III.メタデータの管理とハーべスティング,の3部に分けられていた。

 I.では,メタデータ・スキーマ・レジストリの機能拡張,ダブリンコアの語彙の整備,相互利用のためのメタデータ・スキーマ言語に関する報告があった。

 メタデータの相互利用のためには,メタデータ・スキーマがそのターム,コンテクスト,セマンティックおよびシンタックティックな制限を正確に伝えられなければならない。それでこそ,アプリケーションやマシンがメタデータを分析,理解,利用することができる。3番目の報告は,このメタデータ・スキーマが必要とする言語の要件を5つ提示し,OWL/XDD(Web Ontology Language と XML Declarative Descriptionの複合言語)の適合性を検証したものである。

 II.では,イタリアの多言語アクセスのための法律文献ポータルに関する報告があった。これは,法律情報理論技術研究所の法律文献ポータルが提供する,法律情報への多言語アクセスについて研究したものである。異なる法システム間での専門用語の関連付けには,法システムの特異性を考慮しなければならない。法の分野が必須のメタデータになっているレポジトリに対して,言語に関係なく一度でアクセスを果たす方法を検討し,質問を異なる言語に翻訳する際にマシンの学習により,最終的に曖昧な単語を曖昧でなくしていく方法を導入している。

 III.では,ニュージーランド国立図書館のデジタル化情報とメタデータ管理,科学デジタル図書館のメタデータ改善,コレクションとサービスのレジストリとメタデータ,記録保存のためのメタデータセット,P2Pベースのデジタル図書館におけるメタデータ・ハーベスティングに関する報告があった。最後の報告は,分散した電子図書館環境において,メタデータ・レコードのハーベスティングに関する主な研究をレビューし,その長所と問題点について,報告者のアプローチと比較したものである。P2Pベースの環境で,メタデータを統合する一般的方法を,共有スキーマ,同一コミュニティの別スキーマ,スキーマもコミュニティも別,という3つの状況で提示している。

 

short paper session報告

 (1)語彙と適用条件(application profile),(2)モデル,(3)事例研究,(4)トゥールとメソッド,の4部に分けられていた。その報告の内容テーマは以下の通り多岐にわたっている。

 (1)AGRIS(農業科学技術に関する国際情報システム)のメタデータ交換。カナダ政府のメタデータと統制語。音楽映像情報のメタデータ。ドイツの電子化学位論文のメタデータ。分類表メタデータの相互利用。(2)デジタル図書館システムのためのMETS(Metadata Encoding and Transmission Standard)ベース目録キット。人物とエージェントに関するダブリンコア。メタデータ・モデルの方法論。構造化デジタル情報に基づくメタデータ・モデルとデジタル図書館。中国軍事大学デジタル図書館の保存関係メタデータ・スキーマ(報告は行われなかった)。メタデータと帰納的・主観的探索。(3)中国文化人手稿図書館のためのメタデータ・スキーマ。フランス高品質保健ゲートウェイのメタデータ。日本の画像史料ビュアーとメタデータ。中国教育情報ライブラリーとダブリンコア教育メタデータ。マレーシアのメタデータ管理システム。ドイツ連邦環境庁のメタ情報システム。(4)既存電子化学習情報の正規化トゥール。分散デジタル・コレクション管理のためのオープン・ソース・ソフトウェア。ソフトウェアによるメタデータ・データベースの生成とアクセス性評価。セマンティック・ウェブのための環境健康分野学際シソーラス。

 

 

 次のDC-2005は,来る9月12〜15日にスペインのマドリッドで開催される予定である。

書誌部書誌調整課:坂本 博(さかもと ひろし)

 

(1) 中井万知子. 「2001年ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議」報告. 国立国会図書館月報. (491), 2002, 18-21.
(2) 第3回国際図書館学セミナー. 図書館界. 56(5), 2005, 294-309.
(3) DC-2004: Proceedings of the International Conference on Dublin Core and Metadata Applications. Shanghai, 2004-10.
(4) Dublin Core Metadata Initiative. (online), available from < http://dublincore.org/ >, (accessed 2005-01-26).
(5) Dublin Core Metadata Initiative. “Metadata Training Resources”. (online), available from < http://dublincore.org/resources/training/ >, (accessed 2005-01-26).
(6) “DC-2004 Conference Program”. International Conference on Dublin Core and Metadata Applications 2004. (online), available from < http://dc2004.library.sh.cn/english/prog/ >, (accessed 2005-01-26).
(7) Dublin Core Metadata Initiative. “DCMI Working Groups”. (online), available from < http://dublincore.org/groups/ >, (accessed 2005-01-26).
(8) Dublin Core Metadata Initiative. “Summary of DC Usage Board Meeting in Shanghai, October 2004”. (online), available from < http://dublincore.org/usage/meetings/2004/10/Meeting-summary.shtml >, (accessed 2005-01-26).

 


坂本博. 「2004年ダブリンコア・メタデータ応用国際会議」(DC-2004)開催される. カレントアウェアネス. 2005, (283), p.9-11.
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