CA1221 – 英国図書館、無料制維持の方針 / 吉本恵子

カレントアウェアネス
No.231 1998.11.20


CA1221

英国図書館,無料制維持の方針

英国図書館(BL)理事会は,財政難の一つの対策として利用料金の徴収を勧告していたが(CA1210),将来にわたって無料制を維持する方針を明らかにした。これは,BLがこの7月に利用者と図書館関係者を対象に行ったアンケート調査(consultation exercise)の結果に基づいている。

調査の目的は,次の5か年の戦略目標を策定するために,利用者や関係者から意見を聴取することである。その背景には,国からの補助金が削減され,収集や保存等の基本事業や電子媒体によるサービスを,「2000年に向けての戦略計画」(1993年策定)どおりに達成できない見込みになったことがある。また,図書館を取り巻く環境の変化がBLの図書館サービスに新たな可能性を生み出すとともに,他の情報機関との激しい競争を引き起こしている状況の中で,新たな方針の策定が必要になったものである。

調査では,図書館サービス・蔵書構築・図書館協力等の図書館活動全般にわたって,優先順位を付けることを求めている。特に注目されるのは図書館サービスに対する料金徴収の問題で,直接利用とインターネット上の二次情報の利用についてその可否が問われている。

この結果,1,500以上の回答が得られた。英国図書館協会の回答は,BLの財政難に理解を示しつつも,料金の徴収には絶対に同意できないとしている。また,BLの利用料金導入が他の図書館へ与える影響を強く懸念し,経済界から資金獲得をするべきであると回答している。

調査結果はまだ明らかにされていないが,アッシュワース(John Ashworth)BL理事長は,BL設立の基本原則が再確認され,無料原則が強く支持されたことに安堵の意を示すとともに,政府と交渉する上で,BLの立場を強化するものと受け止めている。またラング(Brian Lang)館長は,「BLは世界中のどの図書館よりも産業界や大学から多くの収入を得ているが,それでも財政難である。調査結果をもとに,さらに増収とコスト削減を図る必要がある。開館時間の短縮や収集活動の縮小も考えられる。財源獲得キャンペーンも始めるだろう」と述べている。

吉本 恵子(よしもとけいこ)

Ref: The British Library strategic review consultation paper. [http://www.bl.uk/information/strat-bs.html
“The British Library Board discuss strategy for the future”. [http://www.bl.uk/information/freeaccess.html
The British Library: strategy review consultation paper, The Library Association's response. [http://www.la-hq.org.uk/directory/prof_issues/blsr.html