カレントアウェアネス
No.207 1996.11.20
CA1092
BNFにおける職員養成方針
BNFが,いよいよ開館の日を迎えようとしている。旧国立図書館(BN)の所蔵資料を引き継ぐにとどまらず,国立の大規模中央図書館として,先進的な機能,新しいサービスが期待されていることは言うまでもない。そのためにはそれらを支える2千人規模の職員の能力開発が重要な課題となる。そこで,BNFの人事政策に携わった経験のあるパストール氏が,この新図書館の職員養成(研修)の方針について述べていることを見てみたい。
能力開発は,職員が自らの担当する職務を知り,その職務に必要とされる能力を発展させることである。その前段階として,研修計画を立てる側が,図書館の多様な職務と,それぞれに必要な能力とを明確に位置づけることが必要である。特にこれからその成否を試されることになるBNFの場合,今現在のだけでなく,将来の利用者の満足につながるような職務をも明確にして,それに対応する能力を準備しておかなければならない。
一方,研修は,当面するより切実な必要性(例えばコンピュータ化への対応など)にも応えなければならない。しかし,そのように個々の必要性に対応することを繰り返していると,全体としてまとまりが悪く,能力開発という点からは問題の多い研修プログラムとなってしまう恐れもある。後で再度取り上げるように,研修計画の立案では,特に,一貫性の保証が重要な課題となる。
研修を通して職員が発展させるべき能力には,司書としての全体的なものから,主題別の専門分野に関わるもの,配属先の仕事をこなすためのものまでいくつかのレベルがある。もちろんその全てを館での研修が担うわけではない。例えば専門分野については,多くは採用以前に大学または高等専門学校(grande e cole)で身につけることになる。フランスの国家公務員には大卒以上のカテゴリーA,バカロレア合格以上のカテゴリーB以下,4つのカテゴリーがあるが,図書館ではAが上級司書免許取得者,Bが司書資格取得者にあたる。上級司書免許はENSSIB(国立高等情報科学図書館学校)で,また司書資格は地方養成センターで取得されるので,少なくともカテゴリーAとBの職員については,司書教育を受けた上で入館してくることになる。その他の職員に対しては,ENSSIB,IFB(司書養成所),地方養成センターや,工業技術短期大学のような機関に,研修を委託することもできる。さらにBNFでは,図書館に特有でない仕事についての研修,例えば経営や市場に関するものは,文化省などに委託している。
このように,図書館になんらかの形で必要とされる能力が多様なら,それらを身につけるための機関,形式も多様である。そこで,BNFのような大規模な図書館では特に,研修が一貫性を欠いた部分的なものに分裂してしまう危険性がある。前に述べたように,専門的な職員養成は館の将来に直接関わる。館の目指す方向性に沿い,それを実現できるようにする,一貫した研修方針が必要である。
そのための方策として,大きく分けて二つのことが提唱されている。一つは綿密な研修計画を練ること。もう一つは幹部による運営委員会が重要な役割を担うことである。幹部の委員会は,館全体のプランを考慮に入れながら,研修計画に推進力を与えることができる。計画では,どのような仕事が,従ってどのような研修が優先されるべきか,その研修は内部で行われるべきか,外部でか,といったことから,スケジュール,手段,評価の予測まで定められねばならない。幹部の委員会がそれらを検討し,調整し,認定することで,研修は高いレベルでの支持を得ることになる。また,幹部が関わることで,館の目的に沿った重要な仕事につながる研修に高い優先順位が与えられる。これによって一貫性のある,効率的な研修が実現されるであろう。それは,ひいては図書館全体の発展にもつながるのである。
永野 祐子(ながのゆうこ)
Ref: Pastor, Jean-Louis. Emploi et formation: une de marche pour la Bibliotheque nationale de France. Bull Bibl Fr 40 (6) 32-38, 1995
日仏図書館学会編 フランス図書館・情報ハンドブック 日仏図書館学会 1989