第3章 文書館・行政情報センター・博物館 (3.11 企画・イベント、3.12 利用者数、3.13 資料利用依頼、3.14 出版・コンテンツ電子化、3.15 類縁機関との関係、3.16 課題・計画)

3.11 企画・イベント

 2005年度に実施した企画イベント事業について聞いた。

図3-14
図3−14 企画・イベントの実施率(複数回答可)

 

3.11.1 文書館

 とくに多かったのは、特別展の開催が26館(70.3%)、一般向けの講演会・講習会が27館(73.0%)、ニューズレター・館報の発行24館(64.9%)の三事業である。文書館事業の普及に力点をおいていることがうかがえる。ついで、研究紀要の発行が18館(48.6%)、その他の出版物の発行が15館(40.5%)で、調査研究の成果を住民に還元しようとしている。

 専門家向けの講演会・講習会が11館(29.7%)、児童・生徒向けの講演会・講習会が6館(16.2%)で、ほかの事業にくらべて少なくなっている。

 少ない職員数のなかで、工夫しながらこれらの事業を実施している館は多い。

 

3.11.2 行政情報センター

 行政情報センターとして、外部に働きかけるための企画イベント事業はほとんど行われていない。ニューズレター・館報の発行が1機関、一般向けの講演会・講習会、児童向けの講演会・講習会がそれぞれ1機関、その他の出版物の発行が2機関だけだった。

 

3.11.3 博物館

 多かったのは、特別展の開催の49館(92.5%)、一般向けの講演会・講習会の50館(94.3%)である。まさに、博物館の主たる事業である。ついで多いのが、ニューズレター・館報の発行42館(79.2%)、その他の出版物の発行41館(77.4%)、児童・生徒向けの講演会・講習会39館(73.6%)、その他のイベント39館、研究紀要の発行33館(62.3%)である。専門家向けの講演会・講習会は11館(20.8%)で少ない。

 さまざまな企画イベントを通して、地域資料を住民に提供しようとしている博物館のすがたがみえる。

 

3.12 利用者数

 カウントされている利用者数を聞いた。以下、それぞれの機関の入館者数と一般向けの講演会・講習会の参加者数をグラフに示す。

図3-15
図3−15 入館者数(無回答を除く)

図3-16
図3−16 一般向け講演会・講習会参加者数(無回答を除く)

 

3.12.1 文書館

 文書館は行政や歴史に関心をもつ特定の人が利用する機関というイメージが強く入館者数は多くない。年間1,000人未満が5館、1,000人から9,999人が21館、10,000人以上が9館となっている。最高は年間99,000人であった。

 

3.12.2 行政情報センター

 入館者数は1万人未満のところが全体の半数近くを占める一方、10万人以上の入館者数をもつ機関が3機関ある。きわめて、格差が大きいといえる。講習会等のイベント事業は、上述のようにほとんど行われていない。

 

3.12.3 博物館

 一般向けの施設ということで、最高年間160万人を筆頭にして入館者数は多い。また講演会や講習会も参加者は多い。

 

3.13 資料利用依頼

 2005年度の外部機関ないし個人による資料利用の依頼の有無と件数を聞いた。

図3-17
図3−17 資料利用の依頼(複数回答可)

 

3.13.1 文書館

 37館のうち、多かったのが、展示用貸出24館、撮影申し込み25館、出版物への掲載許可31館であった。ついで、テレビ・映画等での利用が15館、資料のデジタル化が10館であった。

 

3.13.2 行政情報センター

 展示用貸出4機関、撮影申し込み3機関、出版物への掲載許可2機関、テレビ・映画等での利用が1機関、資料のデジタル化は2機関であった。

 

3.13.3 博物館

 53館のうち、多かったのが、展示用貸出46館、撮影申し込み38館、出版物への掲載許可47館、テレビ・映画等での利用が35館であった。資料のデジタル化は14館であった。

 

3.14 出版・コンテンツ電子化

 冊子による出版、デジタル化(業務用)、デジタル化(インターネット公開)、冊子体とデジタル化の計画の有無について、11項目について聞いている。

 

3.14.1 文書館

 レファレンス事例集では、37館のうち回答のあった7館は、冊子出版1館、業務用デジタル化3館、インターネット公開1館、デジタル化計画2館であった。現状ではまだまだ少数ではあるが、今後、こうした事例の集積と情報提供は増えていくものと考えられる。

 文献目録・書誌解題作成では、19館が実施しており、冊子出版10館、業務用デジタル化10館、インターネット公開4館であった。文書館の主要な業務と位置付けられているといってよい。

 古文献・古文書等の復刻・翻刻については、37館のうち13館から回答があった。冊子出版8館、業務用デジタル化3館、インターネット公開2館、計画ありが3館であった。目録刊行についで、事業に組み込もうとしている文書館が多いといえそうである。

 そのほかの項目については、無回答の館が多かった。

 

3.14.2 行政情報センター

 文献目録・書誌解題作成については、冊子出版が3機関、業務用デジタル化4機関、インターネット公開8機関であった。新聞記事のクリッピング、見出し索引についてはインターネット公開が1機関存在した。しかしながら、利用者支援ツール(パスファインダー、FAQ、リンク集など)、子ども向けに編集した地域資料の作成、古文献・古文書等の復刻・翻刻、写真資料、ポスター、美術品・実物・標本、自治体ホームページにある行政情報のデジタル保存については、47機関すべてが無回答であった。

 以上のことから、行政情報センターは文献目録・書誌解題以外のツールの作成、出版、情報発信といった事業にはほとんど取り組まれていないと言える。地方公共団体の情報発信は他の部門が取り組んでいるからであろう。

 

3.14.3 博物館

 冊子による出版、デジタル化(業務用)、デジタル化(インターネット公開)、冊子体とデジタル化の計画の有無について、11項目について聞いている。

 文献目録・書誌解題作成については、53館中24館から回答があったが、冊子出版が14館、業務用デジタル化8館、インターネット公開9館であった。

 子ども向けに編集した地域資料では、11館から回答があったが、冊子出版が8館、業務用デジタル化1館、インターネット公開が4館であった。

 古文献・古文書等の復刻・翻刻は、回答のあった13館のうち、冊子6館、デジタル化7館、インターネット公開3館であった。

 写真資料は、ほかとくらべて若干多くなっている。回答のあった19館のうち、冊子出版9館、業務用デジタル化8館、インターネット公開が6館であった。

 

3.15 類縁機関との関係

 地域内における各種の類縁機関との関係を聞いている。

 

3.15.1 文書館

 37館の、それぞれの自治体内の類縁機関との協力関係をみる。もっとも多かったのが、地域資料の移管で27館(73.0%)であった。ついで、協力レファレンス25館(67.6%)、利用者の紹介21館(56.8%)、地域資料の相互貸出や複写20館(54.1%)、収集保存する資料やサービスの範囲の調整19館(51.4%)であった。自治体内での行政資料(公文書)等の地域資料の移管は、文書館業務のもっとも中心的なものである。レファレンス対応、それにともなう利用者の紹介、資料情報の相互提供、サービスの調整なども、類縁機関との協力なくしては、住民に充分な対応ができない。

 新機関の計画段階において目的・機能の調整、施設の統合・分離、共同の研究会や研修会の開催など協力は、図書館との協力が8機関(21.6%)ともっとも多かったが、その他の機関との協力は、博物館との協力が7機関(18.9%)となっており、それほど多くはなかった。

 地域資料の移管について、その自治体内の相手先の類縁機関をみると、図書館が18館(48.6%)、博物館が10館(27.0%)、都道府県史又は市町村史編纂室が9館(24.3%)となっている。このアンケート項目にははいっていないが、文書担当部局からの移管も多いと考えられる。

 協力レファレンスでは、図書館が22館(59.5%)、博物館が13館(35.1%)で比較的多くなっている。地域の歴史資料として重要な情報は、自治体史編纂関係機関に集中されていることがわかる。

 利用者の紹介先をみると、図書館が17館(45.9%)でもっとも多くなっている。こうしたセンターなどからの問い合わせを受け入れる機関として文書館が自治体内で位置付けられているということであろう。

 収集保存する資料やサービスの範囲の調整先では、相手先は図書館が多かった(16館)。また、地域資料の相互貸出や複写では、こちらも図書館が13館(35.1%)でもっとも多く、ついで、博物館12館であった。

 

3.15.2 行政情報センター

 行政情報センター47機関中、それぞれの自治体内の類縁機関との協力関係をみる。取り組んでいるものでもっとも多かったのが、地域資料の移管14機関(29.8%)、利用者の紹介12機関(25.5%)、収集保存する資料やサービスの範囲の調整10機関(21.3%)、地域資料の相互貸出や複写で4館(8.5%)、ついで、人事交流2機関、協力レファレンス1機関などとなっている。新機関の計画段階での目的・機能の調整や、施設の統合あるいは分離、共同の研究会や研修会の開催のような事例はなかった。協力は比較的表層的なレベルで行われていることがわかる。

 調整の相手先機関を挙げておく。地域資料の移管については、図書館12、文書館5が目立つところである。サービス範囲の調整は図書館との間で行われたところが8、議会図書室が4、文書館が4となっている。地域資料の相互貸出や複写については、図書館と行われたところが2、他の行政資料室・行政情報センターと行われたところが2であった。利用者の紹介については、図書館9、文書館6、議会図書室6、文学館2となっている。いずれも図書館次いで文書館が相手先機関として挙げられることが多い。

 

3.15.3 博物館

 博物館53館の、それぞれの自治体内の類縁機関との協力関係をみる。もっとも多かったのが、地域資料の相互貸出や複写で34館(64.2%)、利用者の紹介32館(60.4%)、ついで、地域資料の移管31館(58.5%)、協力レファレンス31館、人事交流29館(54.7%)、共同の研究会や研修会の開催29館であった。

 収集保存する資料やサービスの範囲の調整、新機関の計画段階において目的・機能の調整などの協力は、多くなかった。

 紹介先をみると、地域資料の相互貸出や複写では、類縁の博物館が多かった(22館)、ついで、図書館(21館)、美術館(16館)、都道府県史又は市町村史編纂室(10館)である。利用者の紹介先は、図書館が23館(43.4%)でもっとも多かった。ついで、類縁の博物館(22館)、美術館(18館)、文書館(15館)となっている。

 地域資料の移管では、類縁の博物館が15館(28.3%)で、図書館が11館であった。

 協力レファレンスでは、図書館が27館(50.9%)で多かった。ついで、類縁の博物館16館、美術館14館、都道府県史又は市町村史編纂室13館、大学12館である。

 人事交流では、学校が18館(34.0%)で多くなっている。博物館(14館)、美術館(9館)、図書館(8館)が続く。

 共同の研究会や研修会の開催では、類縁の博物館が19館(35.8%)、大学が10館であった。

 

3.16 課題・計画

 今現在抱えている解決すべき課題、今後の計画などを書いてもらう自由記述欄をもうけた。

 

3.16.1 文書館

 11館により記入があった。整理すると、(1)資料の保存スペースの不足、(2)資料の整理、目録データベース化、 (3)市町村合併に伴う資料の受け入れ、(4)地域の図書館、博物館(美術館)の類似資料の収集調整、(5)資料のデジタル化、(6)公開基準の策定と公開・非公開審査の遅れ対策、(7)電子文書の収集保存、(8)災害対策、(9)一般への利用普及、となっている。

 

3.16.2 行政情報センター

 「現在の課題:パンフレットコーナーの不足 将来的課題:資料の増加に伴う配架スペースの不足」「行政資料・公文書の検索システム導入について検討中。行政資料のデジタル化が進んでいるため、保存方法についても検討中です。」「資料の盗難対策」の3件が書き込まれた。

 

3.16.3 博物館

 10館により書き込まれた。整理すると、(1)民間史料に資産価値がある場合、税金との関係で公開できないことがあるため法整備の必要性、(2)施設の老朽化、(3)予算削減、(4)司書がおらず図書の整理が進まない、(5) 情報資料室の土・日・祝休日の開室、(6)学芸員が補充されない、などとなっている。