はしがき

第2章 米国の一般的な図書館のすがた(はしがき)

 本章では、アメリカの公共図書館・学校図書館・大学図書館の実際のサービスをいくつか事例として紹介しているが、その際、小規模な図書館を中心に選んでいる。今回、小さな図書館をあえて選んだのには、次の理由がある。それは、大規模な図書館の活動については、すでに日本でも紹介されているケースが多いことである。それに対し、小規模な図書館のそれぞれの活動については、あまり知られていない。しかし、日本国内にも、小規模な図書館は多く、大規模な図書館に比べ、予算・スペース・スタッフ・資料、いずれをとっても不足気味であり、たいていが悪戦苦闘している。また、厳しい財政状態や図書館に対する周囲の無理解の中で、図書館の存続そのものが危ぶまれるような状態に追い込まれている自治体や教育機関もある。そのため、米国で工夫を凝らしながら活発に活動している小規模・中規模図書館の事例紹介は、その知恵が、日本国内の図書館にとって、参考になる可能性が高いと考えられる。

 もちろん、米国と日本では、文化的・社会的背景も、財源確保のシステムも、法制度も違うので、単純には比べられない。しかし、図書館の本質的な機能は同じである。現在、日本国内で各館種の図書館がさまざまな課題に直面している。米国が、どのような課題に直面し、どのような解決方法を見出しているのか、また、新しくどのようなサービスに取り組んでいるかを事例として情報提供することで、日本の小さな図書館の試行錯誤に何らかの示唆を与えることができれば幸いである。

(岩崎 れい)