E856 – 子どもたちはどのように「ケータイ小説」を受容しているか

カレントアウェアネス-E

No.139 2008.11.19

 

 E856

子どもたちはどのように「ケータイ小説」を受容しているか

 

 毎日新聞社はこのほど,2008年6月に行われた第54回学校読書調査の結果をまとめ,発表した。今回の調査から,以下のような点が明らかになった。

  • 2008年5月に本を1冊も読まなかった生徒の割合は,小学生5%,中学生14.7%,高校生51.5%で,小中学生では過去最低を記録した2007年度とほぼ同率,高校生は2007年度比4%増となった。
  • 1か月の平均読書冊数は,小学生11.4冊,中学生3.9冊,高校生1.5冊で,小中学生は過去最高,高校生は微減となった。
  • 小学生高学年から高校生に広く読まれた小説は昨年(E721参照)に引き続き,あさのあつこ著の野球小説『バッテリー』であった。
  • 中高生女子の間での「ケータイ小説」人気が小学生女子にも及び,美嘉著の恋愛小説『恋空』が小学校5~6年生女子の第2位であった。
  • 教師から本を読むことを勧められる経験は,小学生で52%,中学生で32%,高校生で34%,家庭からの同様の経験は,小学生で48%,中学生で35%,高校生で22%であった。中高生では,教師あるいは家庭のどちらからも「全く勧められない」「あまり勧められない」が,6~7割に達している。

 また今回の調査では,読書状況以外の付帯設問として,「幼児期の読み聞かせと読書」「携帯電話とケータイ小説」に関する調査が行われた。

  • 小学校入学前に,家の人に本を読んでもらった経験は,「よく読んでもらった」「時々読んでもらった」が小学生で72.0%,中学生で61.3%,高校生で65.6%であった。
  • 「ケータイ小説」の読書経験は,「携帯電話で読んだ」「書籍で読んだ」「両方で読んだ」を合計すると,小学生で17.0%,中学生で48.3%,高校生で68.3%であった。
  • 携帯電話で小説を読むことへのイメージの上位には,「便利だ」(小学生22.5%,中学生31.4%,高校生36.3%)「面倒だ」(19.7%,19.6%,18.5%)「読みにくい」(13.9%,16.4%,18.0%)と,正反対の意見が並んだ。

 今回の学校読書調査の結果から,小中学生については昨年度と同様,いわゆる「本離れ」という状況にはないと言えよう。しかし高校生については,不読者が増加している。全国学校図書館協議会はこの結果に対し,読書指導にいっそう力を入れる必要がある,としている。

 携帯電話を利用した読書が引き続き人気を集めているが,出版された本,もしくは携帯電話と本の両方で「ケータイ小説」を読む小中高校生が,「ケータイ小説」読書経験者の中でも少なくない。「子どもと読書」の状況の変化に,図書館も引き続き注視していく必要があろう。

Ref:
http://www.j-sla.or.jp/oshirase/kekka54.html
http://macs.mainichi.co.jp/space/no373/pdf/flash.pdf
http://mainichi.jp/life/edu/archive/news/2008/10/20081027ddm010040038000c.html
http://mainichi.jp/life/edu/archive/news/2008/10/20081027ddm010040045000c.html
E721