カレントアウェアネス-E
No.122 2008.02.06
E751
ウェブアーカイビングの現在と展望 <報告>
国立国会図書館(NDL)では,2008年1月23日に「ウェブアーカイビングの現在と展望−国際的連携に向けて−」と題する,講演とディスカッションの会を開催した。ウェブアーカイブを中心とするデジタルアーカイブ全般について,国際的活動を繰り広げる有識者が講演を行った。
始めに,NDLから開会の挨拶とともに,NDLのウェブアーカイブ事業であるWARPの紹介を行った。
次に,ヨーロピアンアーカイブのディレクターであるマサネス(Julien Masanes)氏が講演を行った。マサネス氏は,インターネットと従来の出版物との違い,ウェブアーカイブの手法とその技術的課題,アーカイブしたインターネット情報へのアクセスの問題,ウェブアーカイブの共通プラットフォームを推進するヨーロッパでの活動などを紹介し,すべてのドメインのアーカイブには国際的な連携が必要であることを述べた。
続いて,インターネットアーカイブ(Internet Archive:IA),ウェブグループのディレクターであるカーペンター(Kris Carpenter)氏が講演を行った。カーペンター氏は,IAの活動とそのアーカイブ,国際インターネット保存コンソーシアムInternational Internet Preservation Consortium:IIPC;CA1537,E729参照)の概要とその目的,アーカイブにおいて利用を意識することの重要性,IAにとっての国際連携の必要性などについて述べた。また,jpドメインのアーカイブの重要性,日本の技術への期待,WARPへの評価から,2008年4月に予定されているNDLのIIPCへの加入に対して, 大きな期待を抱いていると話した。
パネルディスカッションでは,まず,東京大学生産技術研究所の喜連川優教授が,自身の研究である“Socio Sense”というウェブアーカイブを使用したマイニングシステムについて紹介し,その後マサネス氏・カーペンター氏が加わり,アジアにおけるウェブアーカイブの重要性,継続的なウェブアーカイブにおける諸課題,ウェブアーカイブに大学や図書館がいかに取り組むべきか,ウェブアーカイブにおける著作権の問題などの議論が行われた。
インターネット情報は,紙の出版物のようなアナログ媒体に比べ消失しやすく,まさに今この瞬間にも失われており,ウェブアーカイブは国際社会が果たすべき重要な急務であるという発言が多く見られた。ウェブアーカイブを中心とするデジタルアーカイブ全般について,その意義と必要性を改めて認識した一日となった。
(国立国会図書館:池田功一)
Ref:
http://warp.ndl.go.jp/REPOSWP/000000000280/00000000000031689/www.ndl.go.jp/jp/webarch/index.html
CA1537
E729