E2171 - 子どもの電子メディアの利用実態と読書との関係

カレントアウェアネス-E

No.375 2019.08.29

 

 E2171

子どもの電子メディアの利用実態と読書との関係

専修大学文学部・野口武悟(のぐちたけのり)

 

   政府が2018年4月に閣議決定した第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」では,スマートフォンの普及やSNSなどのコミュニケーションツールの多様化にみられる子どもの情報環境の変化が読書環境にも大きな影響を与えている可能性に鑑みて,「国は,本計画の実施期間中にこうした読書環境の変化に関する実態把握とその分析等を行う必要がある」とした。これを受けて,文部科学省では,2018年度に「子供の電子メディアの利用実態を把握し,読書活動等の関係を捉えること」を目的とした「子供の読書活動の推進等に関する調査研究(平成30年度委託研究)」を実施し,報告書を2019年5月にウェブサイトで公表した。この調査研究は秋田喜代美氏(東京大学教授)を座長とする委員会のもとで実施されたが,筆者も委員として参画する機会を得た。本稿では,筆者がポイントと考える点に絞って,関連する先行研究にも触れながら,調査結果を紹介したい。

●子どものインターネット利用

   子どものインターネット利用率は,小学生79.7%,中学生88.5%,高校生94.6%であった。『情報通信白書 平成30年度版』(2018年)に示された年齢階層別のインターネット利用率(2017年)と比較して,大きな差は見られない。

   インターネット利用の内容としては,「ユーチューブなどで動画や音楽を観たり,聴いたりした」が小学生,中学生,高校生のいずれにおいても約7割で最多となった。次いで,「検索サイトを使って調べ事や情報を集めた」がいずれにおいても6割台となった。一方で,「ゲームアプリやオンラインゲームを使った」は,小学生と中学生で4割台,高校生でも5割,「ツイッターやフェイスブック,インスタグラムなどのSNSを使った」は小学生15.8%,中学生27.9%,高校生48.4%にとどまった。

●子どもの電子書籍利用

   子どもの電子書籍利用率は,小学生16.1%,中学生18.7%,高校生21.4%となった。電子書籍の入手先は,オンライン書店での購入よりも,無料のサイトやアプリの利用が多い。電子書籍を利用した子どもでは,その利点として「いつでもどこでも読めるから便利」「何冊も持ち運べるから便利」「無料で本などを読むことができることがよい」「書店・本屋や図書館に行かなくても本が読めるので便利」の4点を挙げる割合が高かった。

   また,小学生,中学生,高校生のいずれにおいても,紙の本で読書をしている子どものほうが,そうでない子どもよりも,電子書籍の利用率が高かった。なお,関連して,電子出版制作・流通協議会の研究(2017年)では,紙の本で読書をしている子どものほうが,そうでない子どもよりも,電子書籍の利用意向が高くなるという結果も示されている。

●子どもの図書館における電子書籍サービスの利用意向

   公共図書館や学校図書館で電子書籍が借りられるようになるとよいと思う子どもは,小学生45.8%,中学生45.8%,高校生44.2%であった。電子書籍を利用したことのある子どもでは,その割合が72.0%となった。

   なお,西澤らの研究(2016年)によると,学校図書館で電子書籍を利用できるようにしたいと考える全国の学校図書館担当職員(司書教諭,学校司書ら)は,小学校46.3%,中学校43.2%,高等学校47.1%であった。電子書籍が借りられるようになるとよいと思う子どもの割合と近似していて興味深い。

●保護者による電子書籍利用の影響

    保護者の電子書籍利用率は,約1割であった。その入手先は,子どもと異なり,無料のコンテンツよりも,オンライン書店での購入のほうが多かった。

   保護者が電子書籍を利用している場合,そうでない場合よりも,子どもの電子書籍利用率は約3倍高い59.2%であった。また,紙の本の読書率においても,保護者が読書をしている子どものほうが高かったが,この点はこれまでの先行研究で示されてきた結果と同様である。

   以上,本稿ではポイントを絞って調査結果を紹介したが,その他の詳細については報告書をぜひご覧いただきたい。

   第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」では,「電子書籍等の情報通信技術を活用した読書も含む」との注記が新たに追加された。今回の調査研究では,その情報通信技術を活用した読書の一端が明らかとなった。しかし,そもそも,電子書籍以外にも多様なインターネットコンテンツが存在する現在,情報通信技術を活用した読書といったときの「読書」の範囲と諸相をどう捉えたらよいのだろうか。引き続き,調査研究を通して,この本質的な問いへの議論を深める必要がある。

Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/04/1403863.htm
http://kodomodokusyo.go.jp/happyou/datas.html
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/h30.html
https://aebs.or.jp/pdf/School_library_e-book_usage_model_report.pdf
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I027332966-00