E2107 – NACSIS-CAT/ILLの軽量化・合理化について(最終まとめ)

カレントアウェアネス-E

No.364 2019.02.28

 

 E2107

NACSIS-CAT/ILLの軽量化・合理化について(最終まとめ)

 

 2018年10月に「NACSIS-CAT/ILLの軽量化・合理化について(最終まとめ)」(以下「最終まとめ」)が「これからの学術情報システム構築検討委員会」(以下「これから委」)から公開された。これまで,2016年3月に「NACSIS-CAT/ILLの軽量化・合理化について(基本方針)(案)」,2017年2月に「同(実施方針)」(E1920参照)等が公開されており,同年10月から全国5か所で開催された「これからの学術情報システムに関する意見交換会2017」を経て今回の「最終まとめ」に至った。これによりCAT2020とも呼ばれてきたNACSIS-CAT/ILLの2020年時点での軽量化・合理化の変更内容が確定した。その変更は,過去にあったようなNACSIS-CAT/ILL単体での機能強化や利便性の追求といった方向ではなく,紙の資料の管理・運用に関するコストを見直すと同時に,外部のデータベース等との相互運用性を高めることを目的としている(CA1862参照)。以下に「最終まとめ」のポイントを解説する(用語は当該文書で使用されている表現に合わせた)。

 何よりも大きい変更は,NACSIS-CATに特徴的であった書誌データの持ち方の変更である。これまでは,著作を物理的に区分するためだけの「上巻」「下巻」等は一つの書誌データの中のフィールドを繰り返すことで表現してきたが,2020年以降,データ作成単位は出版物理単位を基本とすることに変更する。これはISBN等の識別番号により外部データと一対一での対応を容易にすると同時に,あまり活用されてこなかった所蔵データの一括登録などの自動処理を推進する目的もある。

 次に,外部機関作成の書誌データを事前に登録しておくPREBOOKというデータセットを設け,「流用」の手間なく所蔵データを登録できる仕組みを準備する。現状では,外部の機関が作成したMARCはNACSIS-CATの形式に変換された後「参照ファイル」に格納されている。この書誌データを利用して所蔵を登録するときには,予め当該書誌データを総合目録データベースに移す作業が必要であったが,この部分が省略できることになる。また,外部機関作成のデータは準拠する目録規則がNACSIS-CATとは異なる場合があり,これまでは記述方法が異なる項目はすべて修正してきた。2020年以降は,外部機関が採用する目録規則も許容し,例えばRDA(CA1766参照)に従って記述された「pages」を英米目録規則第2版(AACR2)に従った記述である「p.」に修正するような作業を不要とし,書誌データと所蔵データ双方の登録にかかる作業の省力化を進める。

 また,これまで手作業だった書誌レコードと著者名典拠レコードのリンクは,バーチャル国際典拠ファイル(VIAF)に登録してあるNACSIS-CATの著者名典拠データのIDを活用し一部を自動化する。

 さらに,オンライン共同分担目録方式により1,300を超える図書館が一つのデータベースを作成してきたため,重複書誌を排除するための人手による連絡調整が必須であった点は,2020年以降,類似している書誌データの並立を認める。一方で,内容の違いが識別できない書誌データについては重複として自動統合処理を行うことを予定している。この変更により登録前の入念な検索作業を軽減できる。並立書誌データの存在によってILL業務に支障がでないようRELATIONというデータセットを導入する。これは,同じ資料を表すと判定される並立書誌データを自動でグループ化し,複数の書誌データの所蔵をまとめて扱えるようにするための仕組みである。

 2019年1月の時点では,「最終まとめ」に基づき「目録情報の基準」及び「コーディングマニュアル」等のNACSIS-CATで使用されるマニュアル類の改訂が進んでおり,大学図書館向けのシステムを提供している各ベンダーとも技術的な対応について意見交換を行っている最中である。実際の移行日については,2019年度前半のマニュアル類の公開と合わせて通知されることになっている。

 今後の課題として日本目録規則(NCR)2018年版やRDAへの対応が挙げられているが,関連して実際にどのようなデータの持ち方をすれば外部との相互運用性が高まるのか,また,そのとき大学図書館側のシステムはどうあれば望ましいのか等の検討を関係諸機関の動向を見ながら継続して行う必要がある。「これから委」としては,2019年4月から検討体制を見直し,別の作業部会として活動してきた「電子リソースデータ共有作業部会」(ERDB-JP(E1678参照)の運用や海外の電子リソース管理システムの検証が課題に含まれる)とも方向性を合わせることで,さらに大きな変化を早急に遂げることを目標としている。

東北大学附属図書館・佐藤初美

Ref:
https://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20181019.pdf
https://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/history.html
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/about/catwg/rule/rule_catwg.pdf
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20150529.pdf
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20151027.pdf
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/infocat/korekara/
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20160325-1.pdf
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20160325-2.pdf
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20160629.pdf
https://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20170208.pdf
https://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/korekara_doc20180125.pdf
https://www.nii.ac.jp/content/korekara/archive/event/
E1920
E1678
E772
CA1862
CA1766