E1947 – 第27期東京都立図書館協議会の提言:東京2020大会関連

カレントアウェアネス-E

No.332 2017.09.07

 

 E1947

第27期東京都立図書館協議会の提言:東京2020大会関連

 

  本稿では,第27期東京都立図書館協議会(以下,協議会)による,「世界都市・東京を支える情報センターを目指して-2020年とその先に向けた提言-」(以下,提言)より,「都立図書館教育・文化プログラム」(以下,プログラム)について,協議会事務局の立場から概観する。また,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)に関する東京都立図書館(以下,都立図書館)の取組についても紹介したい。

●都立図書館教育・文化プログラム

   今回の提言では,都立図書館は「世界都市・東京を支える情報センター」を目指すべきであるとして,サービス・広報・利用環境の3つの側面からの取組を求めている。「都立図書館教育・文化プログラム」は,この中のサービス面での取組にあたる。協議会では,レファレンス機能とは質問や相談に応じることだけではなく,資料の収集や蓄積,資料の探し方についてのレクチャー,各種の企画展示等を含むものであると,広く捉えている。すなわち都立図書館が行っている活動全般がレファレンスサービスであるという認識のもと,レファレンス機能を強化し,さらに国内外の情報拠点としてのハブの機能も高めていくべきといった基本的な考え方がまとめられ,その具体的な実践としてプログラムが次の3つの内容に分けて提起されている。
 
東京及び日本の文化発信の活動に取り組むとともに,東京2020大会に向かう東京の活動の記録を次世代並びに世界に向けて伝える。
学校におけるオリンピック・パラリンピック教育や伝統文化教育等に対する支援を行い,次世代を担う人材の育成に寄与する
外国人利用者に対する支援の充実を図る。

   ア,イ,ウとも東京2020大会の開催という時代的な要請を受け,大会に向けた機運の向上や,国内外の方々に快く利用してもらうことを目指し,これまで実践してきた都立図書館のサービスをより展開,拡大していくことを求める内容である。アでは,大使館情報コーナーの新設を契機とした国際交流事業など,他機関との連携や,2016年度新設のオリンピック・パラリンピックコーナーなどをさらに展開,活用していくべきといった点に加え,新たな取組としてウェブサイト「東京オリンピック・パラリンピックの世界(仮)」の作成が挙げられている。また,これらの取組が,国内外の多くの人々が新たな「知」や「情報」を生み出すことに資する仕組みづくりにつながっていくという将来的な方向性も示されている。イとウはそれぞれ「次世代を担う人材」「外国人利用者」と,サービスの対象を明確にした内容である。イでは,現在,学校教育において「主体的・対話的で深い学び」の実現が目指されていることを受け,アで取り上げたオリンピック・パラリンピック関連資料の活用も含め,都立図書館が探究活動や課題学習を支援していく方向性を示したものである。具体的には,館内で授業を行うことや,対話をしながら学習できる空間の整備を進め,そのような空間を活用した記録を蓄積,発信することで,新たな利用者層の開拓につなげていくことを求めている。ウは,約29万冊の外国語資料を所蔵する都立図書館が,外国人利用者に対し,「日本人と同様の快適な利用環境を提供する」ための方策として示されたものである。また,この項では「都民が外国人に対して「おもてなし」することに取り組む際に役立つサービスを提供する」点に触れていることも特徴的である。

●都立図書館の東京2020大会関連の取組

    2013年9月8日の開催都市決定の当日よりスタートしたトピック展示「夢が現実に 2020年オリンピック・パラリンピックが東京に」を皮切りに,都立図書館では,大小さまざまな規模でオリンピック・パラリンピックをテーマとした企画展示や,講演会,文献紹介などを行ってきた。こうした取組を集約し,さらに発展させていくため,2016年12月には中央図書館1階に新展示コーナー(オリンピック・パラリンピック,伝統・文化,Books on Japan)をオープンさせた。各展示の内容については,ウェブサイトでも展示リスト等を公開している。また,多摩図書館が所蔵する雑誌や児童・青少年資料にも,過去のオリンピック・パラリンピックや,世界の国々を知るための資料が多く含まれており,展示やウェブサイトでの情報発信を行っている。特に児童・青少年資料は,オリンピック・パラリンピック教育に直結する部分でもあり,ウェブサイトで公開したブックリストも,対象学年や分野別に検索できるよう工夫を行っている。

   以上は,企画展示やブックリストという形での取組であるが,この他,個々の資料をFacebook上で紹介する「東京2020オリンピック・パラリンピックを読む」シリーズや,講演会・トークイベントなど参加型の取組も行っている。提言のプログラムで示された,ウェブサイト「東京オリンピック・パラリンピックの世界(仮)」については,構築に向けて現在準備を進めている段階である。これまでの取組や,今後蓄積されていく情報を,より利用しやすいコンテンツとしてまとめ,発信をしていく方向で検討を進めている。

●まとめ

    提言には,このプログラムに取り組むことが,2020年以降の都立図書館の発展にもつながる,という考え方が通底している。東京2020大会という世界的なイベントは,首都東京にある都立図書館にとって,「大会の機運向上に寄与する」だけではなく,「将来にわたり,都立図書館が国内外の人々に活用されるための大きなチャンスなのだ」という協議会からのメッセージが込められているといってよいだろう。今後,ウェブサイト「東京オリンピック・パラリンピックの世界(仮)」の構築等を軸に,これまでの取組をより充実,発展させていく予定である。そのことは,大会の機運向上に加え,大会以後に生まれた子供たちや,さらにその先の世代に向けて,東京2020大会を伝えていくといった役割を果たすことにもつながっていくはずである。2年間にわたり,大変活発な議論を展開し,このような提言をまとめていただいた第27期協議会委員の皆様には,この場をお借りして,改めてお礼を申し上げる。

東京都立中央図書館・朝倉和代

Ref:
http://www.library.metro.tokyo.jp/about_us/kyougikai/tabid/2084/Default.aspx
http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/18/pdf/27teigen.pdf
http://www.library.metro.tokyo.jp/reference/tabid/4277/Default.aspx
http://www.library.metro.tokyo.jp/reference/tabid/4153/Default.aspx
http://www.library.metro.tokyo.jp/tabid/4279/Default.aspx
http://www.library.metro.tokyo.jp/tabid/4177/Default.aspx#oripara
https://www.facebook.com/tmlibrary/posts/1727953370552808/
http://www.library.metro.tokyo.jp/home/news/tabid/2287/Default.aspx?itemid=1498