E1646 – 米国デジタル公共図書館(DPLA)戦略計画2015-2017

カレントアウェアネス-E

No.274 2015.01.22

 

 E1646

米国デジタル公共図書館(DPLA)戦略計画2015-2017

 

 米国デジタル公共図書館(DPLA)は2015年1月,2015年から2017年の戦略計画を発表した。

 DPLAは,米国各地の図書館,アーカイブズ,博物館,文化機関の所有するデジタルコンテンツを一元的に検索できるポータルサイトである(E1429参照)。2013年4月の公開から1年で,検索対象データが500機関の240万点から1,200機関の700万点に,スタッフも3名から12名にと,順調に拡大している。戦略計画ではさらなる発展を目指し,「コンテンツ」,「技術」,「アウトリーチ・教育」,「財政・継続性」といった観点から,最優先事項,補助的に行うべき事項を挙げている。

●コンテンツ

 DPLAにメタデータを提供している機関は,Service Hub,Content Hubの2種類に分けられる。Service Hubは,州や特定地域内の諸機関のメタデータを集約してDPLAに受け渡す機関である。これに対し,Content HubはDPLAに対して直接メタデータを提供する機関であり,20万点以上のデジタル化されたコンテンツを所有することが参加条件になっている。Service Hubがカバーしているのはまだ15の州であり,その他の州の小規模な機関にはContent Hubとしての参加のハードルが高いことから,Service Hubのネットワークを全米に完備することが最優先事項とされている。次いで,Content Hubに可能な限り多くのデータを追加すること,さらに,現在の枠組みでは対象外のコンテンツ(電子書籍,視聴覚資料,学術研究の成果等)を収集対象とするプロジェクトの実現,メタデータ・アプリケーション・プロファイルの改善やLinked Dataの活用によるメタデータの品質向上,より合理的な形でのデータの利用条件の表示が挙げられている。

●技術

 現在のインフラは,当座のサービス開始を目指して構築されたものであり,これを継続性と相互運用性に配慮したプラットフォームとして完成させることが最優先事項に挙げられている。インフラの最新化においては,5つの重点領域として,ウェブ上でのユーザビリティとアクセシビリティ,インフラのコストおよび効率性の改善,インフラ開発の協力体制の推進,オープンソースのプロジェクトへの貢献,DPLAのAPIを利用するコミュニティへのさらなる貢献が挙げられている。

 また,それぞれのHubがメタデータの収集システムとして利用できるよう,DPLAのインフラの一部を再利用して開発することも挙げられている。さらに,米国内のHubに加えて,Europeana(E1624参照),オーストラリア国立図書館の“Trove”,ニュージーランドの“DigitalNZ”といった海外の文化情報資源のアグリゲータとも協力し,再利用可能な技術要素について検討を開始しているという。DPLAは,オープンソースでインフラの開発を行っており,プラットフォーム,ポータル等のソースコードをGitHubにて公開している。オープンな知的環境への貢献というDPLAの主要なミッションの一つとして,このような活動も継続していくことが挙げられている。

●アウトリーチ・教育

 幅広い対象への普及活動に加えて,コレクションから最も大きな利益を受けると考えられる利用者層やコミュニティなどへの,ターゲットを絞ったアウトリーチを通じて,DPLAのポータルとプラットフォームの利用を増やすことが最優先事項とされている。

 DPLAではボランティアを活用し,地域のコミュニティのあらゆる立場の人々にDPLAを普及させる“Community Reps”というプログラムを実施している。2014年には,全米50州および5か国からの200名をCommunity Repsとして承認した。Repsは,図書館,博物館,企業,学校でのイベントの運営や,DPLAのコンテンツや技術を紹介する入門的な資料の作成などを行っている。また,ワークショップ,発表やディスカッションなどを行うイベント“DPLAfest”を毎年開催している。こうした直接的なアウトリーチ活動の継続に加え,ソーシャルメディアの活用も挙げられている。DPLAのソーシャルメディアのフォロワー数はTwitterが16,000以上,Facebookが10,000以上,Tumblrが6,000以上であり,ソーシャルメディア管理専門の職員を置く必要があるとしている。

●財政と継続性

 2017会計年度末までに,財源の多様性を確保することで,財政基盤を強化することが最重要課題とされている。具体的には,「新しいプロジェクトを支援する助成金」,「核となるサービスの費用を賄うための基金,企業,個人からの寄付」,「収益が得られるサービス」,「大規模なコミュニティやコンソーシアムの参加費,後援」などの複数の財源が想定されている。

 総じて,ユーザや関係機関との共同,協力体制の構築など,関係者を巻き込む仕組みの重視が強く打ち出された戦略といえる。今後のさらなる発展に期待したい。

関西館図書館協力課・篠田麻美

Ref:
http://dp.la/info/2015/01/07/whats-ahead-for-dpla-our-new-strategic-plan/
http://dp.la/info/wp-content/uploads/2015/01/DPLA-StrategicPlan_2015-2017-Jan7.pdf
http://dp.la/info/get-involved/reps/
http://dp.la/info/get-involved/dplafest/
E1105
E1164
E1235
E1429