E1622 – 論文のアクセス権・ライセンス権を表現する試み<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.269 2014.10.30

 

 E1622

論文のアクセス権・ライセンス権を表現する試み<文献紹介>

 

Neylon, Cameron. et al. Standardized MetadataElements to Identify Access and License Information. Information Standards Quarterly, 2014, 26(2), p. 34-35.

 近年,多くの雑誌記事がオープンアクセス(OA)やパブリックアクセス,もしくは類似の名称で刊行されているが,その意味するところは,出版社,同一出版社の雑誌,資金提供者によって異なっており,その定義は混乱しているのが現状であろう。それは,様々なレベルでのアクセス権・再利用権を簡潔に指し示すことができるメタデータの標準が存在しないことに起因している。論文のアクセス権や再利用権を示すメタデータ要素の標準セットを定めることを目的に,米国情報標準化機構(NISO)は,2014年1月6日にドラフト版の推奨指針“Open Access Metadata and Indicators”(後にAccess and License Indicatorsと改称)を公開した。

 このドラフト版では,具体的には,既存の手段を使って送信できる2つのメタデータのタグの採用が提案されている。検討に携わったワーキンググループ(WG)は,これらの2つのタグで,利用者,リポジトリ,著者,助成機関,研究機関が,必要とするエンバーゴ期間や再利用条件,権利関係,コンプライアンス等のライセンス条項に関する情報を把握できるとしている。なお,著作内の図形・データセットなどの構成要素はそれぞれのタグを個別に適用することが想定されている。

 2つのタグの内容は以下のとおりである。

(1)Free-to-read は,料金やその他の制限なしにオンラインで著作が利用可能かを示す単純なステータスで,開始日・終了日という2つの属性が存在する。開始日と終了日はエンバーゴ等の制限を受け,利用可能な期間を設定することができ,開始日・終了日の記載がない場合は,永続的なフリーアクセスであることを示すものとされている。また,OAやパブリックアクセス等の定義が混乱している現状をかんがみ,WGではOAという名称のタグは採用せず,記事へのアクセス権の具体的な内容を記述するタグとして実装することにしたという。

(2)License reference は,著作の使用条件に関するライセンス条項を示す外部のURIへの参照を示すタグで,外部情報への参照のため,指定できるライセンスやライセンスに含まれる条項に制限はない。また,複数のライセンスへの参照も可能である。エンバーゴ期間や権利内容の時間的変化に対応するため,参照する各々のライセンスに対して異なる開始日を指定することができる。また,クリエイティブコモンズのように終了日が存在しないライセンスへの対応を考慮し,指し示すライセンス内容が曖昧になることを避けるため,終了日に対応する属性を設けていない。さらに,このタグ内のデータはHTTP URIとして表現される安定した識別子である必要があり,そのコンテンツを利用可能とするプラットフォームでメンテナンスする必要性を指摘している。再利用権は,メタデータで完全に表現するのは難しいため,このように外部の情報を参照する方法を採用したとのことである。

 また,論文の編集や制作の標準的な流れにこれらのタグの設定を可能な限り含め,CrossRefや他のDOI登録機関で管理する情報に不可欠の要素とすべきことや,HTMLのメタタグ等のように他のメタデータと一緒にコンテンツに組み込まれて配信されるべきことが指摘されている。

 さらに,WGは,両タグはXMLでエンコードされ,可能な限り,既存のメタデータの流通経路にコンテンツとともに配信されるべきと述べている。それゆえ,両タグは既存のスキーマやワークフローに追加されるべきだとされる。そうすれば,OA雑誌の出版システムや情報集約システムが,これらのタグを読み取って,適切なステータスアイコンを表示させるようにプログラムできることが事例としてとりあげられている。

 加えて,メタデータの流通経路の広がりは利用者の資料の発見と利用に役立つと考えられ,コンテンツプロバイダーが,両タグを抄録・索引作成サービスで直接提供するのと同様にRSS購読フィードのようなアラート伝達手段内にも組み込むことの有効性が示唆されている。

 WGでは,勧告が採択された場合,ONIX,RDF,OAI-PMH,ダブリンコアといった既存のメタデータフォーマットに両タグを組み込む最善の方法を分析するさらなる作業が必要であると認識しており,NISOではこれら追跡調査に取り組むための常任委員会の必要性を検討するとのことである。

 現在,2014年1月6日から2月4日にかけて募集していたパブリックコメントで明確になった問題に対処するため議論がなされており,最終版は,2014年秋に公開予定とのことである。

関西館図書館協力課・武田和也

Ref:
http://dx.doi.org/10.3789/isqv26no2.2014.07
http://www.niso.org/workrooms/ali/
http://www.niso.org/apps/group_public/download.php/12047/rp-22-201x_OA_indicators__draft_for_comments.pdf