カレントアウェアネス・ポータルは、図書館界、図書館情報学に関する最新の情報をお知らせする、国立国会図書館のサイトです。

E1480 - 北米図書館でのRDA実践に関する調査報告

カレントアウェアネス-E

No.245 2013.09.26

 

 E1480

北米図書館でのRDA実践に関する調査報告

 

 2013年3月31日,OCLCは2010年に発表された新たな目録規則Resource Description and Access(RDA;CA1766CA1767参照)のWorldCat適用に関する方針を公開した。RDAとは,英米目録規則第二版(AACR2)の後継にあたるもので,「書誌レコードの機能要件(FRBR)」(CA1665参照)に基づき設計された,目録を記録するためのガイドラインである。これに関し筆者は,国立大学図書館協会の海外派遣事業を通じ,8月3日から14日まで「北米図書館でのRDA実践に関する調査」を行った。

 訪問先は米国議会図書館(LC),シカゴ大学図書館,コロンビア大学図書館の3館で,計24人にインタビューを行った。米国議会図書館(LC)の研修事業担当Cooperataive and Instructional Program Division(COIN)ではカナン(Judith Cannan)氏をはじめとする4名に, RDAの研修方法について話を伺った。また目録部門では,LCの日本語資料目録作業について簡単な聞き取り調査を行った。シカゴ大学図書館ではクローニン(Christopher Cronin)氏から,コロンビア大学図書館ではハーコート(Kate Harcourt)氏から,RDAテスト(E1191参照)について,またテストに参加したスタッフからは具体的な書誌登録作業におけるRDAのメリット,デメリットについて伺った。これらに加えシカゴ大学ではRDAを使用した書誌登録作業を実践する機会を得た。

 カナン氏の話によると,LCによるRDAの研修は2012年6月から2013年3月にかけて実施された。研修は上記期間中4週間のコースが随時開催され,LC約500名,共同目録プログラム“Program for Cooperative Cataloging”(PCC)約3,000名のスタッフがこれを受講した。講師はCOINの4名が担当し,それにRDAテストに参加した米国の大学図書館のスタッフが協力したとのことである。研修で使用された教材はウェブで公開されている。

 実務を担当するカタロガーはRDAに次のようなメリットを感じているという。

(1)データの再利用性
 MARCで作成された図書館目録は「コンピュータ上でリンクをたどれる方法で記述されていない」という問題点があったが,この解決策としてのRDAに重要性を見出す意見が多く聞かれた。

(2)新しい資料形態に対応可能
 RDAはAACR2のように資料形態順ではなく,FRBRの作品,表現形,体現形,個別資料の“WEMI順”で記述されているため,デジタル資料や今後新たな資料形態が生じた際にも,対応可能なフレキシビリティがある点がメリットだということだった。

(3)データの明確化
 RDAから入力可能になった追加項目によって,これまで区別できなかった情報を区別できるようになった。例えばLCは中国名の著者名典拠の標目にピンインを使用するため,同名異人の区別が難しかったが,それらが区別できるようになったのは大きな成果だという。

 一方,次のようなデメリットを感じているという。

(1)次世代書誌的枠組みの必要性
 RDAが効果を十分に発揮するためには,MARC21に代わるBibliographic Framework Initiative(BIBFRAME;E1386参照)などの「新たな枠組みの完成」への期待の声が多く聞かれた。また現状の図書館システムがRDAの新項目に対応しておらず,入力した項目が活かしきれていない点も指摘された。

(2)書誌作成時間の増大
 多くの情報が入力可能になった点は評価できるが,データ作成のために調査時間が増えたことが問題点として指摘された。

 書誌登録作業の実践では,図書館システム面についてはMARC追加フィールド以外に大きな変更はないと感じた。実際にシカゴ大学のシステム担当者に確認したところ,MARCテーブルをRDAに対応した形に更新する以外に大きな修正は行っていないそうだ。また,書誌登録作業においてもコピー・カタログの作業ではRDAによる判断の難しさに出会う場面はあまりなく,RDA特有の項目の追加のみ対応すればよいとのことだった。

 しかしオリジナル・カタログの作成では判断に迷うケースが多い。RDAはオプションの選択場面が多く,例示やインストラクションが不足しているとの指摘が特に多く聞かれた。オプションの選択では例えば,日本語資料の出版年が「ニ〇一三」と漢数字で書かれている場合,RDA1.8.2では「作成機関が適切とする字体を記録する」としている。そのため目録作成機関は,「算用数字に置き換える(=2013)」,「情報源に表れているとおりの表記(=二〇一三)」,「情報源の表記+算用数字の補記(=二〇一三[2013])」の3通りの選択肢から選択することができる。LCはいかなる言語でも数字は「情報源に表れているとおりの表記」を採択することを作業方針としているが,漢数字については慣習的に算用数字に置き換えて記録しているそうだ。一方,コロンビア大学は作業方針に従い「情報源に表れているとおりの表記」,すなわち漢数字で記録している。このように数詞の表現一つとっても作成されたデータに揺れがあるようだ。

 どのオプションを採択するか,その取り扱いについては,LCやPCCは別途作業指針(LC-PCC PS)を定めている。LC-PCC PSはRDAの提供サイトRDA Toolkitで公開されている。

 RDAの背景にある図書館目録データをウェブの世界で利用しやすくするという目標は,国や組織の違いを越えた共通の課題だと思う。まずはRDAが第一歩を踏み出したことを評価し,筆者を含め日本のカタロガーも変化に向けて前向きに取り組みたい。

(東京外国語大学学術情報課目録係・村上遥)

Ref:
http://www.janul.jp/j/operations/overseas/
http://access.rdatoolkit.org/
http://www.oclc.org/en-US/rda.html
http://www.oclc.org/en-US/rda/new-policy.html
http://www.loc.gov/catworkshop/RDA%20training%20materials/index.html
http://rdaandcjkworkshop.pbworks.com/w/page/49263527/Q_A
http://www.loc.gov/aba/pcc/
http://www.loc.gov/bibframe/
E1191
E1386
CA1665
CA1766
CA1767