カレントアウェアネス-E
No.196 2011.07.07
E1191
米国議会図書館(LC)等によるRDAテストの結果が公表される
英米目録規則第2版(AACR2)の後継の目録規則であるRDA (Resource Description and Access)について,米国の議会図書館(LC),国立医学図書館,国立農学図書館の3つの国立図書館は,その導入の可否を判断するため,3館を含む26機関が参加したテストを実施していた(CA1686参照)。2010年6月のRDAツールキットのリリース後,テスト参加機関による書誌レコード作成等の作業とその結果分析が行われ,2011年6月に,米国RDAテスト調整委員会(U.S. RDA Test Coordinating Committee)による結果報告と,それに対するLC等3館の声明が公表された。報告の要約版から,結論部分を中心に紹介する。
報告では,RDAの合同運営委員会(JSC)によるRDA戦略プランの10の目標に今回のテスト結果を照らして,目標の達成度が示されている。「あらゆる種類の資源とコンテンツについて,一貫していて柔軟で拡張可能な枠組みを提供する」「データの保存・伝達に使用されるフォーマット・媒体・システムに依存しない」という目標は達成と評価された一方,「オンラインツールとしての使用に最適化されている」「平易な英語で書かれ,他の言語コミュニティでも使用できる」「業務でも研修でも,容易かつ効率的に使用できる」という目標は未達成と評価された。その他の目標は,部分的達成という評価か,テストでは検証できなかったとされている。
これを踏まえ,調整委員会は,設定目標を実現すべきであり,目標がしっかりと達成されるまでは導入を延期するという方針を決めた。そして,LC等3館に対する勧告として,目標実現のための課題や行動が十分に進捗・完了することを条件として2013年1月以降にRDAを導入すべきこと,LC等3館は図書館界内外の多くの尽力を必要とするこれらの活動が進展するよう資源を投入すべきであること,を示した。
続いて,導入のための条件となる具体的な活動として9項目が,それぞれ予測される作業期間とともに示されている。作業期間には幅があり,「オンライン環境でのRDAのアップデートのためのプロセスを定める」「RDAツールキットの機能性を改善する」では3か月間となっているが,長いものでは,「RDAの指示を,明確で平易な英語で書きなおす」「RDAの研修を主導し調整する」「RDA要素セットを用いた入力・検索システムのプロトタイプを募る」はそれぞれ18か月間,「MARCの代替に向けた信頼に足る進捗を示す」では18~24か月間という期間が示されている。なお,作業期間の起点は2011年7月1日とされており,その18か月後が2013年1月である。
報告では,RDA導入の影響について,メタデータ作成のコストの大幅な節約に結びつくものではなく,研修にかかるコストも避けられないとしながらも,直近の利益だけがRDA導入の判断材料ではなく,将来のメタデータ環境の充実等による長期的な利益が導入コストを上回るかどうか等についても考慮されなければならないとしている。
また,米国の図書館界でRDAを導入すべきかどうかをテスト参加機関に尋ねた結果も記されており,機関による回答では,「はい」が34%,「修正されれば」が28%,「どちらとも言えない」が24%,「いいえ」が14%であった。一方,機関の書誌レコード作成者による回答では,「はい」が25%,「修正されれば」が45%,「いいえ」が30%であった(「どちらとも言えない」の選択肢なし)。
調整委員会による報告を受け,LC等3館は,報告を支持するという内容の声明を発表した。声明では,RDAの導入は短期的に発生する不安やコストに見合うだけの長期的な価値があるとしたうえで,ウェブ環境において図書館は他の情報資源全てとのつながりを創設せねばならず,RDA導入が遅れることは,より広い情報コミュニティとの効果的な関係の構築が遅れることであるとの見解が示されている。
調整委員会による報告の本編では,テスト結果の詳細のほか,JSC,ALAの出版部門,図書館界,ベンダーへの勧告も掲載されている。
Ref:
http://www.loc.gov/bibliographic-future/rda/
http://www.loc.gov/bibliographic-future/rda/rda-execsummary-public-13june11.pdf
http://www.loc.gov/bibliographic-future/rda/rda-execstatement-13june11.pdf
http://www.rda-jsc.org/stratplan.html
http://www.rdatoolkit.org/blog/196
CA1686