E1285 – フランスで絶版書籍の電子的利用に関する法律が成立

カレントアウェアネス-E

No.214 2012.04.26

 

 E1285

フランスで絶版書籍の電子的利用に関する法律が成立

 

 2012年3月1日に,フランスで著作権保護対象資料のうち入手不可能な書籍(livre indisponible,以下「絶版書籍」)の電子形態での利用を可能にする法律(「20世紀の絶版書籍の電子的利用に関する2012年3月1日の法律第2012-287号」)が制定された。この法律は,20世紀に出版されて絶版書籍となっている50万点を5年以内にデジタル化し,有償提供することを目的として調印された政府を含む関係者間の合意(E1144参照)に基づくものである。

 同法は,絶版書籍の著作者及び印刷形態での複製権を有する元々の発行者(出版社等)以外の第三者に対して,絶版書籍の電子形態での複製や公衆送信等(以下「電子的利用」)を許可する制度を確立するものである。対象となる絶版書籍は,2000年12月31日以前にフランスで発行された書籍であって,現在,商業的な頒布の対象となっておらず,印刷形態でも電子形態でも発行されていないものである。

 電子的利用の許可は,文化・通信大臣の認可を受けた著作権料の徴収と分配に関する団体(société de perception et de répartition des droits:SPRD)が行う。SPRDは,フランス国立図書館(BNF)が運用管理する予定の絶版書籍のデータベースに登録された書籍について,次のような手順に従い第三者に対して最長5年の電子的利用の許可を与えることができる(許可は更新可能)。

 まず,データベースへの登録から6か月以内であれば,著作者又は元々の発行者は,SPRDの許可権限に対して異議を申立てることができる。元々の発行者は,異議申立てから2年以内に当該書籍を電子化したり,印刷形態で再販するなどして,有効に利用(以下「有効利用」)し,それを証明しなければならない。もしこの期間内に利用の事実が認められなかった場合,SPRDは第三者に電子的利用を許可することができる。

 次に,6か月以内に著作者等の異議申立てがなかった場合には,SPRDはまず元々の発行者を探して電子的利用の提案をする。元々の発行者は,この提案を受諾する場合には3年以内に当該書籍を有効利用しなければならない。しかし,元々の発行者が2か月以内に提案を受諾しない場合又は3年以内に当該書籍を利用しなかった場合には,SPRDは第三者に電子的利用を許可することができる。

 なお,データベースへの登録から6か月が経過した後でも,著作者及び元々の発行者はSPRDの許可権限に異議を申立てることができるが,すでに第三者に与えられた許可は期間内は有効となる。この場合,元々の発行者は申立てから18か月以内に書籍を有効利用したことを証明しなければならない。

 この他に,SPRDは,最初の電子的利用の許可から10年以内に印刷形態の複製権者が見つからなかった場合には,図書館に対し,蔵書中の絶版書籍の電子的利用及び利用者への頒布を許可することができる。ただし,電子的利用は,図書館が経済的利益及び商業的利益の追求を目的としない場合にのみ許可される。

 同法は,同法の詳細を補う下位法令の公布をもって施行される予定である。しかし,著作権制度を否定するものであるとの批判もあり,今後の動向が注目される。

(調査及び立法考査局海外立法情報課・服部有希)

Ref:
http://www.legifrance.com/affichTexte.do?cidTexte=JORFTEXT000025422700&categorieLien=id
http://www.assemblee-nationale.fr/13/dossiers/exploitation_numerique_livres_XXe.asp
http://www.lemonde.fr/idees/article/2012/03/16/main-basse-sur-les-livres-du-xxe-siecle_1670163_3232.html
http://www.loc.gov/lawweb/servlet/lloc_news?disp3_l205403052_text
E1144